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海外論文サーベイ(経済セミナー)| 2026.03.30
 雑誌『経済セミナー』の "海外論文Survey" からの転載です.

(奇数月下旬更新予定)

Ashraf, N., Bandiera, O., Minni, V. and Zingales, L.(2025) “Meaning at Work,” NBER Working Paper, 33843.
$\def\t#1{\text{#1}}\def\dfrac#1#2{\displaystyle\frac{#1}{#2}}$

北川梨津

はじめに

「ときにはマルクスの極致に触れ,自らの近経さを知る」ことも大事だろう1).マルクス経済学は近現代の経済を「労働疎外」で特徴づける.分業と資本の所有関係のもとで,労働者は成果から切り離され,自分が何のために何をつくっているのか実感しにくくなる,ということだ.共産主義の失敗を経た今日でもマルクス主義が関心を集める理由の 1 つは,この疎外の感覚がいまだ現実味を持つからだろう.

働く意味を実感するのは難しい.自分の仕事は自分にとって何なのか,誰にでもできることを生活のためにしているだけではないのか? そうした問いに前向きに答えられる人は多くない.筆者自身も最近学術誌の査読で論文のデスクリジェクトが続き,「何の意味があるんだ」と虚空をみつめている.

では,労働者が仕事における意味を実感することは経済的に重要なのだろうか? それとも,それはマルクス主義が知識市場において支持を獲得するための,単なるセールス上のレトリックにすぎないのだろうか?

今回紹介する Ashraf et al.(2025) は,ある多国籍企業 (一般消費財メーカー) において 14 カ国に所在する約 3000 人の若手ホワイトカラー従業員を対象に,仕事における意味の発見を促す研修プログラムの効果を無作為化比較試験 (Randomized Controlled Trial: RCT) によって検証している.自分の仕事にどのような意味を見出せるのかを従業員にみつめ直してもらうことが,従業員と企業にとってどのような帰結をもたらすのかを検討している本研究は,「働くことの意味」の価値が何かという壮大な問いに対して部分的な答えを与えているといえるだろう.

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脚注   [ + ]

1. (1)今回紹介する論文がカール・マルクスを引用しているので本稿でもマルクスに言及している.筆者の個人的な趣味でマルクスの話をしているわけではない.

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