アフガニスタン戦争20年と日本(水島朝穂)

法律時評(法律時報)| 2021.10.29
世間を賑わす出来事、社会問題を毎月1本切り出して、法の視点から論じる時事評論。 それがこの「法律時評」です。
ぜひ法の世界のダイナミズムを感じてください。
月刊「法律時報」より、毎月掲載。

(毎月下旬更新予定)

◆この記事は「法律時報」93巻12号(2021年11月号)に掲載されているものです。◆

1 勝手に始めて、勝手に終えた「米国の戦争」

8月30日、バイデン米大統領は「20年間にわたるアフガニスタンでの米軍駐留は終了した」と、アフガニスタン戦争の終結を宣言した。2001年10月7日から2021年8月30日まで20年近く続いた「米国史上最長の戦争」ということが強調されたが、そのきっかけ、ないし口実とされたのが、いわゆる「同時多発テロ」である。私はその直後からホームページで論評を出し続けたが、5周年の時点でこう書いた1)。「ブッシュ大統領は、『9.11』直後、『これは戦争だ』(厳密に言うとThe Art of War)と叫んだ。そもそも非国家的主体(『テロリスト』)による攻撃に対して、それがどんなに規模が大きくても、これを『戦争』と呼び、軍隊を他国への攻撃に投入したのは重大な誤りだった。あの時、国際刑事警察機構などとともに、全世界の警察組織が連携して容疑者を追及すれば、少なくとも『テロとのたたかい』はアラブ世界にも支持を広げられたに違いない。ブッシュのやったことは、『世紀的な誤り』と言ってもいいだろう。」と。

個々のテロ行為でも、国家による「武力攻撃」と同程度の効果を発生するような場合には、それを国家による「武力攻撃」に準ずるものとみなして、自衛権の発動を正当化する議論がある(「事態の累積理論」)。この議論でも、国家が「テロリスト」に何らかの形で関与していることが前提とされる。具体的にいえば、資金や活動拠点の提供などによる「直接的関与」のほか、警察力が弱くて、「テロリスト」の活動を十分に抑止できないような国もまた、「間接的関与」と評価され、自衛権行使の対象となりうるというものである。アルカイダの拠点を自国内に置かせていたタリバン政権に対して、米国はこうした論理に乗って「空爆」2)を行った。その後の世界が「暴力の連鎖」に向かうのは周知の通りである3)

このアフガニスタンをめぐる状況を貫いているのは、戦争を一方的に始めて、一方的にやめた米国の身勝手さである。ブッシュもバイデンも、自国中心主義で判断したという点では共通している。欧州も日本も中東諸国も、米国(大統領の任期と人気)に振り回されてきたのが、この20年だったのではないか。

このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。→ . 会員登録(無料)はお済みですか? 会員について

脚注   [ + ]

1. http://www.asaho.com/jpn/bkno/2001/0917.html
2. 「空爆」と「空襲」の違いについて、http://www.asaho.com/jpn/bkno/2013/0930.html
3. 加藤周一・井上ひさし・樋口陽一・水島朝穂『暴力の連鎖を超えて』(岩波ブックレット、2002年)参照。