寛容的利用が違法とされた不幸な経緯に関する一考察:最三小判令和2年7月21日(リツイート事件)(田村善之)

判例時評(法律時報)| 2020.10.20
一つの判決が、時に大きな社会的関心を呼び、議論の転機をもたらすことがあります。この「判例時評」はそうした注目すべき重要判決を取り上げ、専門家が解説をする「法律時評」の姉妹企画です。
月刊「法律時報」より掲載。

(不定期更新)

◆この記事は「法律時報」92巻11号(2020年10月号)に掲載されているものです。◆

最高裁第三小法廷令和2年7月21日判決

1 はじめに

最判令和2・7・21(平成30 1412)[リツイート]1)は、システム上、リツイートに必然的に伴うトリミングにより元ツイートにあった著作者名が落とされて表示されたことについて、氏名表示権侵害を肯定する判断を下した。しかし、リツイートを過度に制約しかねないことを懸念する反対意見が付されていることに加えて、そもそも本件訴訟が、この問題を違法と判断するのに相応しい舞台であったのかということに筆者は疑問を覚えている。以下では、紙幅の都合上、最高裁の判旨の網羅的な検討は別の機会に譲り、筆者のこの感想に関わる要素のみを検討していく。

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脚注   [ + ]

1. 参照、劉楊「判批」知的財産法政策学研究掲載予定。本稿の作成に際しては、資料の収集や分析に関して、東京大学法学政治学研究科研究生の劉楊さんのお世話になった。記して感謝申し上げる。