行政活動の法的基準(須田守)(連載:行政法を使いこなす 第1回)

連載紹介(法学セミナー)| 2026.07.23
隔月刊「法学セミナー」の連載より、お勧めの回をご紹介します。読んで興味を持たれたら、ぜひ本誌を手に取ってみてください。
(不定期更新予定)

◆この記事は「法学セミナー」849号(2026年4・5月号)に掲載されているものです。◆

連載開始にあたって

行政法学修の難しさは、理論の抽象性と素材の複雑さとの差にあります。これは、行政法という物差しから社会を視るという、教養の獲得を妨げます。試験では、法令の基礎的な運用能力が欠けているため、判例を上辺だけなぞった的外れな答案を書いてしまうこともあります。この連載では、第1に、以上の局面に共通する、行政法を「使う」ための基本動作を伝達します。第2に、事例問題の処理に必要な着想を得るための、思考枠組を提案します。知識の網羅性は重視せず、教科書では学びにくい“かゆいところ”や、演習書では身に付けにくい体系的な見取り図を、コンパクトに示すよう努力します。想定読者は、行政法の基礎知識に触れた方から、本格的な試験対策をされる方までです。紙幅の関係で、答案を紹介することは難しい場合がありますが、論述の流れがわかるような説明を心がけます。

1 行政法の特徴

(1)法律と行政活動

定価:税込 1,760円(本体価格 1,600円)

行政法の大きな特徴は、行政機関が、自ら法を解釈適用し、積極的に私たちに関与するところにあります。場合によっては、権利や義務、法的な地位を、強制的に規律してしまうこともあるでしょう。これにより、社会に存在する様々な公益や私益の調整が目指されます。ここから、行政上の案件や紛争で、何が問題となるかも見えてきます。第1に、行政機関の行為が、はたして法的に許容されるかです。第2に、その行為によって不利益を被った者が、救済のためにどのような訴訟を提起できるかです。行政法の世界を描くための視点は様々ですが1)、多くの場合、学修の中心はこうした項目です。例えば、重大な交通違反をすれば、運転免許が取り消されますね。自動車を運転できる地位を侵害してでも、社会全体の交通の安全という公益を確保することが、正当化されます。仮に、相手方が免許の取消しは許されないと考えたとします。この場合、裁判所に対して、免許の取消しをなくしてもらうよう請求する訴えを提起するでしょう。

行政活動の法的な基準となるのが、法律です。行政活動が法律を遵守していれば、この意味で正しい利益調整がされています2)。逆に、法律違反の行政活動は、誤った利益調整を意味します。運転免許の取消しが誤っていれば、相手方の権利が不当に制約されていますよね。もし法律自体がおかしければ、法律の憲法違反が問われます。

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脚注   [ + ]

1. 参照、大橋洋一「行政法の対象と範囲」髙木光=宇賀克也編『行政法の争点』(有斐閣、2014年)6-7頁。
2. 参照、原田大樹「法律による行政の原理」法教373号(2011年)4-5頁。

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