所有者不明土地管理制度の運用状況をめぐって — 今後の議論のために(秋山靖浩)
法律時評(法律時報)| 2026.07.27
世間を賑わす出来事、社会問題を毎月1本切り出して、法の視点から論じる時事評論。 それがこの「法律時評」です。ぜひ法の世界のダイナミズムを感じてください。
月刊「法律時報」より、毎月掲載。
(毎月下旬更新予定)
◆この記事は「法律時報」98巻8号(2026年8月号)に掲載されているものです。◆
1 はじめに
2021年(令和3年)の民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)により、所有者不明土地問題への対応の一つとして、所有者不明土地管理制度が民法に創設された。所有者不明土地(「所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地」。土地が数人の共有に属する場合における「共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地の共有持分」も含まれる)を対象として、裁判所が、所有者不明土地管理人による管理を命ずる処分(所有者不明土地管理命令)をすることによって、当該所有者不明土地を所有者不明土地管理人に管理させる制度である(民法264条の2以下)。
以下では、所有者不明土地管理命令を単に「命令」と、所有者不明土地管理人を単に「管理人」とそれぞれ呼ぶことがある。
2 所有者不明土地管理制度の趣旨
(1) 所有権に対する制約との関係

所有者不明土地を所有者不明土地管理人に管理させることは、当該所有者不明土地の所有権に制約を加えることとなる。
裁判所が所有者不明土地管理命令において所有者不明土地管理人を選任すると、所有者不明土地の管理処分権は管理人に専属する(民法264条の3第1項)。管理人は、この管理処分権に基づいて、所有者不明土地につき、保存行為や所有者不明土地等の性質を変えない範囲内での利用改良行為をすることができるだけでなく、裁判所の許可を得れば、この範囲を超える行為(典型的には売却などの処分行為)をすることも許されている(同条2項)。このような管理人による管理処分権に服するという態様でもって、当該所有者不明土地の所有権に制約が課されるわけである。












