(第8回)法セミ2020年11月号の学び方のポイント&例題

Webでも!初歩からはじめる物権法(山野目章夫)| 2020.09.07
本コーナーは、雑誌「法学セミナー」と連動した企画です。
連載に先だって、次回取り扱う内容のポイントと例題を掲載していきます。予習に、力試しに、ぜひご活用ください。そして、「法学セミナー」本誌もあわせてご覧ください。初学者の強い味方となる「初歩からはじめる物権法」、2020年4月号より連載開始です!

(毎月中旬更新予定)

連載第8回の「学び方のポイント」

2020年4月号から始めた「法学セミナー」の連載「初歩からはじめる物権法」は、11月号で第8回を迎えます。民法の第2編の175条以下を扱うものであり、この第8回から、後半の担保物権の分野に進みます。規定でみると、295条から後ですが、条の順序に沿って進めず、第8回からしばらくは、抵当権を取り上げます。抵当権は担保の女王、と呼ぶ人もいますから。なぜキングでなくクイーンか、気になる人がいるかもしれません。あるいは、キングとクイーンの区別を気にするようなことはおかしいと感ずる人もいることでしょう。そのような話を交えながら、第8回から抵当権が始まります。

連載第8回の「例題」

【例題1】
A・B・CはそれぞれLに対し甲・乙・丙の債権を有する。甲・乙の債権を担保するためLが所有する15番の土地に抵当権が設定され、まずAのために、ついでBのために抵当権の設定の登記がされた。丙債権を担保するためには、物的担保が設定されない。

(1) Aは、その抵当権の順位をBに対し譲渡し、また、Cに対し抵当権を譲渡した。15番の土地の担保不動産競売において、B・Cのいずれが最先順位の優先弁済を受けるか。

(2) Aは、あいついで甲債権をB・Cに対し譲渡した。15番の土地の担保不動産競売において、B・Cのいずれが最先順位の優先弁済を受けるか。

【例題2】

27番の土地は、Aが所有する。Bは、建物を所有する目的でAから27番の土地を賃借した。Cは、Bに対し甲債権を有する。

(1) Cは、甲債権の担保として、Bが甲土地に有する賃借権を目的とする抵当権の設定を受けることができるか。

(2) Bは、27番の土地の上に乙建物を築造し、その所有権を取得した。Cが乙建物を目的とする抵当権の設定を受けた場合において、抵当権が実行されて乙建物を売却により取得したDは、Bが甲土地に有していた賃借権を取得することができるか。

【例題3】

A・Bが賭博をし、Bが負けてAに対し賭博金債務を負った。A・Bは、この賭博金債務を目的として消費貸借をすることを約した。

33番の土地は、Bが所有し、Bを登記名義人とする所有権の登記がされている。Aは、上記の準消費貸借に係る債権を担保するため、Bから33番の土地に抵当権の設定を受け、その旨の登記がされた。Bが上記消費貸借の債務を履行しないことから、Aの抵当権に基づく甲土地の担保不動産競売が開始された。

(1) Bは、この担保不動産競売を阻むことができるか。

(2) 担保不動産競売が阻まれず、Cが買受人となった場合において、Bは、Cに対し、甲土地の所有権を主張することができるか。

(3) (2)の場合において、Bは、Aに対し、Aが配当として得た弁済金に相当する額の支払を請求することができるか。


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山野目章夫(やまのめ・あきお 早稲田大学教授)
1958年生まれ。亜細亜大学法学部専任講師、中央大学法学部助教授を経て現職。
著書に、『不動産登記法 第2版』(商事法務、2020年)、『ストーリーに学ぶ 所有者不明土地の論点』(商事法務、2018年)、『詳解 改正民法』(共著、商事法務、2018年)、『新・判例ハンドブック1、2』(日本評論社、2018年)、『物権法 第5版』(日本評論社、2012年)など。