(第7回)法セミ2020年10月号の学び方のポイント&例題

Webでも!初歩からはじめる物権法(山野目章夫)| 2020.08.05
本コーナーは、雑誌「法学セミナー」と連動した企画です。
連載に先だって、次回取り扱う内容のポイントと例題を掲載していきます。予習に、力試しに、ぜひご活用ください。そして、「法学セミナー」本誌もあわせてご覧ください。初学者の強い味方となる「初歩からはじめる物権法」、2020年4月号より連載開始です!

(毎月中旬更新予定)

連載第7回の「学び方のポイント」

法学セミナー」10月号は、連載「初歩からはじめる物権法」の第7回をお届けします。この回は、他人の土地を使用することを内容とするさまざまな物権を扱います。その一つに地役権があり、「ちえきけん」と読みます。例を挙げると、他人の土地を通行させてもらい、通路を開設したりします。街のなかで、時機を同じくして建てられた住宅の敷地の間で、公道との行き来を簡便にするねらいで、実際に用いられています。物権ですから、登記をすることにより第三者に対抗することができます。

登記をしないで通路を開設して他人の土地を通行していた地役権者がいた事例において、この事実を十分に知ったうえで、通路が設けられている土地を買った者が登記不存在を言い立てて地役権の存在を否定しようとしました。最高裁判所が、平成10年2月13日に言い渡した判決の事件です(民集52巻1号65頁)。裁判所は、信義に照らし登記不存在を主張することができない、としました。それは、そうでしょう。第1回から読んでくださっている皆さんのなかには、土地を買った者が背信的悪意者に当たると考える方もいることでしょう。

ところが、です。この判決が、背信的悪意者の概念を用いて結論を導いたか、というと、さあ、どうでしょうか。この点の謎解きもします。どうぞ連載第7回をお楽しみに。

連載第7回の「例題」

【例題1】
27番の土地は、東側の公道に接し、Aが所有している。28番の土地は、西側の公道に接し、Bが所有していた。Aは、Bに対し、西側の公道との間を迅速に往来するため、28番の土地の一部を通行することを便益とする地役権の設定を要請した。これを受け、A・Bは、27番の土地を要役地とし、28番の土地を承役地とし、上記内容の通行を便益とする地役権を設定した。Aは、この地役権に基づき28番の土地に通路を開設し、通行をしている。この地役権の登記は、されていない。

やがてBから28番の土地を買って引渡しを受けたCは、通路の部分に障害物を置き、Aの通行を困難にした。Aは、Cに対し、通行の妨害をしてはならない、と請求することができるか。

【例題2】
62番の土地はA・Bが所有し、これに隣接する63番の土地はCが所有する。これらの土地は、いずれも公道に面する。62番の土地の共有物分割において、62番の土地を分筆し、公道に面しないこととなる62番1の土地をAが取得し、公道に面することとなる62番2の土地をBが取得することとなった。

(1) Aは、公道に至るために、どのような通行の権利を行使することができるか。

(2) Bから62番2の土地を買ったDとAとの法律関係は、どうなるか。

【例題3】
75番の土地は、Aが所有している。隣接して76番の土地が所在する。所有者は、わからない。76番の土地には、甲立木が生立している。

(1) 甲立木の根が境界線を越え、75番の土地に伸びてきている。土地の使用を妨げられているAは、どうしたらよいか。

(2) 甲立木に蜂の巣があり、たびたび75番の土地に蜂が飛来する。危険を感ずるAは、どうしたらよいか。


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山野目章夫(やまのめ・あきお 早稲田大学教授)
1958年生まれ。亜細亜大学法学部専任講師、中央大学法学部助教授を経て現職。
著書に、『不動産登記法 第2版』(商事法務、2020年)、『ストーリーに学ぶ 所有者不明土地の論点』(商事法務、2018年)、『詳解 改正民法』(共著、商事法務、2018年)、『新・判例ハンドブック1、2』(日本評論社、2018年)、『物権法 第5版』(日本評論社、2012年)など。