(第9回)法セミ2020年12月号の学び方のポイント&例題

Webでも!初歩からはじめる物権法(山野目章夫)| 2020.10.20
本コーナーは、雑誌「法学セミナー」と連動した企画です。
連載に先だって、次回取り扱う内容のポイントと例題を掲載していきます。予習に、力試しに、ぜひご活用ください。そして、「法学セミナー」本誌もあわせてご覧ください。初学者の強い味方となる「初歩からはじめる物権法」、2020年4月号より連載開始です!

(毎月中旬更新予定)

連載第9回の「学び方のポイント」

2020年4月号から始めた「法学セミナー」の連載「初歩からはじめる物権法」は、12月号で第9回を迎えます。第9回も抵当権ですが、このたびは、すこし経済学の本を開いてガイドをしましょう。

「地価は、土地をずっと使った場合の価値を今の価値に割り引きながら合計した数字で……地代は土地を一定期間利用した場合の価値」です(『経済学を味わう/東大1、2年生に大人気の授業』〔2020年〕154頁)。

ということは、債権回収をめざす抵当権者は、地価(建物の価格でも話は同じ)から優先弁済を受ける方法のほかに、弁済を地代(家賃)から受ける途もあってよい。それを第9回で考えましょう。

また、地価について言えば、賃借権や地上権の負担がない土地のほうが、それがある土地よりも、もちろん高い。また、建物が存在している土地は、存在していない土地より、概して安い。他人の建物が存在していても、建物の所有者から十分な地代が得られるならば安くはならない、と一応はいえよう。現実には十分な地代を得られないことが多いし、建物がなく土地を自ら随意に用いることができる利益が優ると考えられる土地が多い。そこで、権利の負担がなく、かつ、建物が存在しいない土地は、更地(さらち)とよばれ、抵当権者から高い評価を与えられる。この言葉もおぼえておいて、第9回を楽しみにしてくださるようお願いします。

連載第9回の「例題」

【例題1】
抵当権に基づく物上代位に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは、後記1から5までのうち、どれであるか。

(ア) AがBに対し有する債権を担保するためにBの建物に抵当権が設定され、その建物が賃貸されている場合において、抵当権の登記がされた後にBの他の債権者であるCが賃料債権を差し押えたとしても、Aは、Cが転付命令を取得する前に自ら賃料債権を差し押さえるときに、Cに優先して賃料債権から弁済を受けることができる。

(イ) (ア)の場合において、Aのために抵当権の設定の登記がされた後にDが賃料債権の譲渡を受けたときに、Aは、Dに優先して賃料債権を行使することができる。

(ウ) (ア)の場合において、Aが物上代位の差押えをする前に建物賃借人のEがBに対し貸金債権を取得していたときに、Eは、この差押えの前に取得していた貸金債権であることを理由として、同債権を自働債権とする相殺をもってAに対抗することができる。

(エ) (ア)の場合において、Aのために抵当権の設定の登記がされた後にBに対し必要費償還請求権を取得した賃借人は、この請求権を自働債権とする相殺をもってAに対抗することができる。

(オ) (ア)の場合において、賃料債権についてのAの物上代位の差押えがされた後に、建物がFへ譲渡されたときに、差押えがFに対して効力を有しないから、Fは、Aの差押えを排除することができる。

1 (ア)(ウ)  2 (ア)(オ)  3 (イ)(エ)  4 (イ)(オ)  5 (ウ)(オ)

【例題2】

Aは、Bに対し金銭を貸し渡し、これに伴い取得する貸金債権を担保するため、Bの所有する21番の土地に抵当権の設定を受けた。甲建物は、21番の土地の上に所在し、Bが所有する。いつから甲建物が存在するか、よくわからない。

(1) 調べてみると、Aが抵当権を取得した当時、21番の土地に建物は存在しない。甲建物は、後日に築造された。Aの抵当権が実行されて21番の土地を買い受けたCは、甲建物の収去を請求することができるか。

(2) 調べてみると、Aが21番の土地の抵当権を取得した当時、同土地の上に乙建物が所在し、Bが所有していた。やがて乙建物は取り壊され、しばらくして甲建物が築造された。Aの抵当権が実行されて21番の土地を買い受けたCは、甲建物の収去を請求することができるか。

【例題3】

A・Bが資金を出し、Aの所有する31番の土地の上に甲建物が築かれ、甲建物をA・Bが共有している。Aが、この土地に抵当権を設定し、抵当権が実行されて31番の土地をCが買い受けた場合において、Cは、甲建物の収去を請求することができるか。

【例題4】

A・Bが共有する47番の土地の上にAが単独で甲建物を所有している。Aが甲建物に設定した抵当権が実行され、甲建物をDが買い受けた場合において、Bは、Dに対し甲建物の収去を請求することができるか。


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山野目章夫(やまのめ・あきお 早稲田大学教授)
1958年生まれ。亜細亜大学法学部専任講師、中央大学法学部助教授を経て現職。
著書に、『不動産登記法 第2版』(商事法務、2020年)、『ストーリーに学ぶ 所有者不明土地の論点』(商事法務、2018年)、『詳解 改正民法』(共著、商事法務、2018年)、『新・判例ハンドブック1、2』(日本評論社、2018年)、『物権法 第5版』(日本評論社、2012年)など。