(第9回)コロナ禍で問われる EU の拡大戦略(土田陽介)

コロナ危機とEUの行方| 2020.10.09
2020年に入って突如世界を席巻し始めた新型コロナウイルス感染症は,2020年3月11日にはWHOによってパンデミック宣言され,依然として予断を許さない状況が続いています.このコラムでは,さまざまな立場のEU研究者が,「コロナ危機下のヨーロッパ」がどう動くのか,どこへ向かうのかについて読み解いていきます.(全12回の予定)

西バルカン対応で失態を犯した EU

コロナ禍で新たに問われているのが、欧州連合 (EU) の引力である。EU は新型コロナウイルスの感染が拡大した当初、EU 域外にマスクの輸出を禁止した。これに反発したのが、2025 年の EU 加盟を目指しているセルビアだ。セルビアのブチッチ大統領は EU の対応を強く批判し、EU との間で軋轢が生じることになった。

現在、将来的な EU 加盟が検討されている 8 ヶ国のうち、EU はバルカン半島にある国々を「西バルカン諸国」と定義している。2018 年 2 月、EU の執行機関である欧州委員会は、西バルカン諸国のうちセルビアと隣国のモンテネグロについて 2025 年の EU 加盟を目指すと発表、クロアチア (13 年) 以来となる EU 拡大の筋道をつけた。

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土田陽介 (つちだ・ようすけ)
三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング (株)調査部副主任研究員。
2005 年一橋大経卒、06 年同修士課程修了。株式会社浜銀総合研究所を経て、2012 年より三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社調査部にて、エコノミストとして活動。欧州を中心にロシア、トルコ、新興国のマクロ経済、経済政策、政治情勢などについて調査・研究を行う。
主要経済誌への寄稿 (含むオンライン)、学会誌への査読付き論文多数。近著に『ドル化とは何か --- 日本で米ドルが使われる日』(ちくま新書)、『図説ヨーロッパの証券市場 (2020 年版)』(分担執筆、日本証券経済研究所) がある。