(第10回)コロナ禍の長期化が迫る政策の重点シフト(伊藤さゆり)

コロナ危機とEUの行方| 2020.10.23
2020年に入って突如世界を席巻し始めた新型コロナウイルス感染症は,2020年3月11日にはWHOによってパンデミック宣言され,依然として予断を許さない状況が続いています.このコラムでは,さまざまな立場のEU研究者が,「コロナ危機下のヨーロッパ」がどう動くのか,どこへ向かうのかについて読み解いていきます.(全12回の予定)

欧州で新型コロナの感染が再加速しており、スペイン、フランス、英国など次々と行動制限の再強化を打ち出している。各国は、感染状況に応じて地域毎に段階の異なる制限を導入することなどで、なんとか春先のような全土ロックダウン (都市封鎖) を回避しようとしているが状況は厳しい。1〜3 月期前期比年率マイナス 14.1%、4〜6 月期同マイナス 39.4%と大きく落ち込んだ EU 経済は、7〜9 月はいったん大きくプラス成長に振れる見込みだが、10〜12 月期に、早くも息切れしそうな雲行きになってきた。

深い落ち込みを短期間で回復する V 字型の景気回復が難しくなったことは、コロナ危機が債務危機、金融危機に発展するリスクが高まりつつあることを意味する。

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伊藤さゆり (株)ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究理事。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本興業銀行(現みずほフィナンシャル・グループ)を経てニッセイ基礎研究所入社。早稲田大学大学院商学研究科修士課程修了。早稲田大学大学院商学研究科非常勤講師兼務。日本EU学会理事。著書に『EU 分裂と世界経済危機 --- イギリス離脱は何をもたらすのか』(単著、NHK出版新書)、『EU は危機を超えられるか --- 統合と分裂の相克』(共著、NTT出版)、『英国のEU離脱とEUの未来』(共著、日本評論社)。