家族に優しい政策は企業にも優しいか?:出生行動と女性のキャリアの狭間で

海外論文サーベイ(経済セミナー)| 2026.05.28
 雑誌『経済セミナー』の "海外論文Survey" からの転載です.

(奇数月下旬更新予定)

Bover, O., Guner, N., Kulikova, Y., Ruggieri, A. and Sanz, C. (2026) ~~Family-Friendly Policies and Fertility: What Firms Have to Do with It?” Working Paper.Ashraf, N., Bandiera, O., Minni, V. and Zingales, L.(2025) “Meaning at Work,” NBER Working Paper.
$\def\t#1{\text{#1}}\def\dfrac#1#2{\displaystyle\frac{#1}{#2}}$

御子柴みなも

はじめに

ファミリー・フレンドリー・ポリシー (家族に優しい政策) は、仕事と出産・育児の両立を支援し、労働市場への参加を促すことを目的としている。日本においても、女性に限らず男性の育児休業取得の促進など、両立を支える制度が拡充されてきた。これらの政策の本来の目的は労働参加の促進であるが、少子化対策としても位置づけられている。この背景には、労働市場への参加やキャリアの構築 (人的資本の蓄積) と出生行動との間にトレードオフが存在し、それらの両立が難しい場合に出産を控える傾向にあることが挙げられる1)。このため、ファミリー・フレンドリー・ポリシーが女性の就労や人的資本蓄積、ひいては出生行動に与える影響を明らかにすることは重要である。

従来の研究でも、時短勤務、育児休業、保育サービスへの補助金などの政策が労働供給、男女間賃金格差、出生行動に与える影響が分析されてきた2) 。近年のサーベイによれば、これらの政策の効果は一様ではなく、時短勤務や長期の育児休業は女性の労働供給を維持する一方で賃金格差を拡大させる可能性があるのに対し、保育サービスの拡充は労働供給の増加、賃金格差の縮小、および出生の増加に同時に寄与する傾向が指摘されている (Doepke et al. 2023)。

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脚注   [ + ]

1. 女性の就労に伴う機会費用や人的資本蓄積と出生の関係については、Becker (1960) などの古典的研究に加え、近年では出産後の賃金・昇進への影響を分析したいわゆる「チャイルド・ペナルティ」に関する研究 (Kleven et al. 2025) がある。日本については、時短勤務が昇進に影響を与える可能性を指摘する研究が存在する (Okuyama et al. 2025) 。
2. マクロ経済学におけるファミリー・フレンドリー・ポリシーに関する包括的なサーベイとして、Greenwood et al. (2017)、Albanesi et al. (2023)、Doepke et al. (2023) を参照。

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