(第27回)原本・正本・謄本そして抄本

民事弁護スキルアップ講座(中村真)| 2024.03.22
時代はいまや平成から令和に変わりました。価値観や社会規範の多様化とともに法律家の活躍の場も益々広がりを見せています。その一方で、法律家に求められる役割や業務の外縁が曖昧になってきている気がしてなりません。そんな時代だからこそ、改めて法律家の本来の立ち位置に目を向け、民事弁護活動のスキルアップを図りたい。本コラムは、バランス感覚を研ぎ澄ませながら、民事弁護業務のさまざまなトピックについて肩の力を抜いて書き連ねる新時代の企画です。

(毎月中旬更新予定)

1 「原本、正本、謄本、そして抄本」

民事手続上、文書の分類の仕方としてはいくつかの視点があります。

例えば、「公文書/私文書」や「処分証書/報告証書」などといった具合にです。

同じような分類の視点として「原本/正本/謄本/抄本」というものもあります。

では、これらの違いについて、正確に理解できているでしょうか。「謄本は全部の写しで、抄本は一部の写し」ということくらいは、ある程度社会常識として理解しているかもしれませんが、原本と正本の別や、正本と謄本の違いについては、普段よくわからず、その場その場で条文上指示されるままなんとなく使い分けているという方も多いのではないでしょうか。

2 辞書でまず意味を調べてみよう

まず、平易なところで考えてみましょう。ベネッセの『チャレンジ小学国語辞典(カラー版第2版)』によると、原本、正本の項目はありませんでしたが、謄本・抄本については以下のような記載がありました。

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中村真(なかむら・まこと)
1977年兵庫県生まれ。2000年神戸大学法学部法律学科卒業。2001年司法試験合格(第56期)。2003年10月弁護士登録。以後、交通損害賠償案件、倒産処理案件その他一般民事事件等を中心に取り扱う傍ら、2018年、中小企業診断士登録。2021(令和3)年9月、母校の大学院にて博士(法学)の学位を取得(研究テーマ「所得税確定方式の近代及び現代的意義についての一考察-我が国及び豪・英の申告納税制度導入経緯を中心として-」)。現在、弁護士業務のほか、神戸大学大学院法学研究科にて教授(法曹実務)として教壇に立つ身である。