(第26回)期日変更は狭き門?

民事弁護スキルアップ講座(中村真)| 2024.02.21
時代はいまや平成から令和に変わりました。価値観や社会規範の多様化とともに法律家の活躍の場も益々広がりを見せています。その一方で、法律家に求められる役割や業務の外縁が曖昧になってきている気がしてなりません。そんな時代だからこそ、改めて法律家の本来の立ち位置に目を向け、民事弁護活動のスキルアップを図りたい。本コラムは、バランス感覚を研ぎ澄ませながら、民事弁護業務のさまざまなトピックについて肩の力を抜いて書き連ねる新時代の企画です。

(毎月中旬更新予定)

1 期日変更してますか?

一旦決まった民事の裁判期日は、デートや飲み会のリスケジュールを依頼するようには簡単に変更できません。とはいえ、実務家の中には「期日変更はなんとなくややハードルが高い」程度に捉え、その具体的なルールや実際のハードルの高さをきちんと理解していない方も多いのではないでしょうか。

そこで、今回は、民事裁判の期日変更を取り上げたいと思います。

2 期日の変更とは何か

いつもの如く、まずは期日変更の定義を確認しておきましょう。議論している対象を常に正しく見据えておくのは法律家のあるべき基本姿勢です。

「期日の変更」とは、「期日が開始される前に当該期日の指定を取り消し、別の新期日を指定すること」です(裁判所職員総合研修所監修『民事実務講義案Ⅰ(五訂版)』88頁)。

これと似た概念に「期日の延期」がありますが、こちらは「期日を開いたが当事者の不出頭又は予定証人の不出頭等の理由により、当事者による弁論及び裁判所の訴訟行為がなされず調書の『弁論の要領等』の欄に実質的記載事項がないが、新期日を指定すること」とされています(同書88頁)。10年や20年実務についていれば、「呼出」で申請した中立的な証人が証拠調べ期日に出頭せず、結局、期日が延期になったというほろ苦い経験は誰しもあるでしょう。「期日の変更」も「期日の延期」も実質的な審理が行われないまま新期日が指定される点は同じですが、期日がすでに始まっているかどうかという点が大きく違います。

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中村真(なかむら・まこと)
1977年兵庫県生まれ。2000年神戸大学法学部法律学科卒業。2001年司法試験合格(第56期)。2003年10月弁護士登録。以後、交通損害賠償案件、倒産処理案件その他一般民事事件等を中心に取り扱う傍ら、2018年、中小企業診断士登録。2021(令和3)年9月、母校の大学院にて博士(法学)の学位を取得(研究テーマ「所得税確定方式の近代及び現代的意義についての一考察-我が国及び豪・英の申告納税制度導入経緯を中心として-」)。現在、弁護士業務のほか、神戸大学大学院法学研究科にて教授(法曹実務)として教壇に立つ身である。