(第5回)ルビンの壺――面会交流(前編)

ただいま調査中! 家庭裁判所事件案内(高島聡子)| 2024.02.05
2024年度前期朝ドラ『虎に翼』のモデルとなった三淵嘉子が、その設立に関わることになる家庭裁判所。戦後まもなく産声を上げた、社会的弱者のための裁判所では、令和の今、どんなことが起きているのでしょうか? そして「家庭裁判所調査官」とは、どんなお仕事?
普段は手続非公開のベールに隠れている“中の人”が、リアルな現場の点景をお伝えします。
(事件はすべて、家裁に係属する事件の特徴を踏まえて創作した架空のものです)

(毎月上旬更新予定)

争いのない事実

ケンカの多い夫婦であった、ということに争いはない。その理由の多くは母の家事の不手際を父が責めることに端を発していて、父が母に向かって物(リモコン、ティッシュの箱)を投げたことがある。父母の間には小学5年の姉と、小学2年の弟がいるが、父母が子らの前で語気荒く口論になったことも度々あった。発達の問題があって多動気味である弟に、母はやや手を焼いており、「産むんじゃなかった」と口にしたことがある。

父が、弟のサッカーチームのコーチと母の不貞を疑ったことから口論となり、その流れで母が「もう離婚よ」と言い、父は「好きにしろ。出て行くなら子どもを置いて出て行け」と言い返し、その3日後、母は子らを連れて家を出て、実家に戻った。

まもなく、父は面会交流の調停を申し立て、母は夫婦関係調整(離婚)と婚姻費用(生活費)請求の調停を申し立てた。

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高島聡子(たかしま・さとこ)
神戸家庭裁判所姫路支部総括主任家庭裁判所調査官。
1969年生まれ。大阪大学法学部法学科卒業。名古屋家裁、福岡家裁小倉支部、大阪家裁、東京家裁、神戸家裁伊丹支部、京都家裁、広島家裁などの勤務を経て2023年から現職。現在は少年、家事事件双方を兼務で担当。
訳書に『だいじょうぶ! 親の離婚』(共訳、日本評論社、2015年)がある。