(第3回)なぜ平和は築かれず議会制民主主義は後退したのか—冷戦後の世界
現在史のプリズム(三浦俊章)| 2026.06.04
第二次世界大戦後に築かれた国際秩序がいま大きく変容し、崩れつつあります。その秩序をつくったアメリカのトランプ大統領自らが「法の支配」を無視し、むき出しの強者の論理を押し付けているのです。私たちは、視界不良のまま海図なき航海に乗り出しているのではないでしょうか。とはいえ、現在の私たちがあるのは、過去の歴史の積み上げの結果なのです。世界と日本のこれまでの歩みを振り返り、歴史の知恵を生かして私たちの現在と未来を考える連載を始めます。(毎月上旬更新予定)
今回は自己紹介を兼ねて私の記者人生の歩みを語ることで、この連載を貫く問題意識について書いてみたいと思います。
1984年に朝日新聞社に入社しました。地方勤務を経て、東京本社政治部に配属されたのが1988年6月でした。1988年という年に政治記者の仕事をスタートできたことはつくづく幸運だったと思います。
翌1989年は世界史の分水嶺となりました。この年の11月にベルリンの壁が崩壊し、同年末には米ソ首脳が「冷戦の終わり」を宣言します。日本に目を転じると、私が政治部に来た88年6月に、昭和後期の政官財癒着を象徴するリクルート事件が発覚、みるみるうちに政界に広がり、55年体制の終焉と一連の政治改革の引き金となりました。要するに、世界と日本が激変する直前の姿、いわばアンシャンレジーム(旧体制)を観察する機会をぎりぎり得ることができたのです。その経験が、現在に至る政治の変容を分析する視座を与えてくれたように思います。
この40年近く、世界と日本の動きを見続ける中で、私は二つの大きな疑問を抱くようになりました。第一に、なぜ冷戦後の世界は安定した国際秩序を築けなかったのか。第二に、なぜ議会制民主主義は後退し、ポピュリズムが台頭するようになったのか。日本において活力ある二大政党制の実現を目指した政治改革が成果を上げなかったのはなぜか、という問題もこの第二の問いに含まれるでしょう。
まず国際秩序の話から始めましょう。
三浦俊章(みうら・としあき)元朝日新聞記者。政治部、ワシントン特派員、論説委員、編集委員、テレビ朝日系列「報道ステーション」コメンテーターなどを歴任。主著に『ブッシュのアメリカ』(岩波新書、2003年)、共訳に『アメリカ大統領演説集』(岩波文庫、2025年)など。













