(第7回)ヨルダンでの精神保健プロジェクト

紛争・災害と子どものこころのケア――世界の精神保健の現場から(田中英三郎)| 2023.04.04
2022年ロシアによるウクライナ侵攻は日本に住む私たちにも大きな衝撃を与えました。また、新型コロナウイルスのパンデミックや自然災害など、私たちの日常を一変させる出来事がいつやってくるかは予想もつきません。こういった出来事はすべての人々のこころに暗い影を落としますが、特に子どものこころへの影響は計り知れません。この連載では、世界と日本の現場から、子どもたちのこころの健康を保つためにどんなことがされているのか、レポートしていきます。

(毎月上旬更新予定)

今月は、ヨルダンを事例として、開発援助における精神保健プロジェクトについてお話しします。

今から20年以上前、私が駆け出しの精神科医師としてトレーニングを始めた頃に、「いつか自分の専門性をもって国際協力に貢献したい」と、同僚に話したことがあります。その時の同僚の反応は「文化や言葉の違いが大きいから、精神科医として国際協力に関わるのは現実的ではないだろう」でした。

外科医であれば、紛争地で傷ついた人々を直接手当することができます。内科医であれば、世界に蔓延する感染症をはじめとした身体疾患の制圧に貢献できるかもしれません。

では、文化や習慣、言語が異なる国にやってきてた精神科医が、その国の精神保健の向上のためにできることはあるのでしょうか?

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田中英三郎(たなか・えいざぶろう)
2001年愛媛大学医学部を卒業、精神科医師。ユニバーシティカレッジロンドン(UCL)等で社会疫学を研究、公衆衛生学修士、博士(医学)。国立国際医療研究センター、国境なき医師団、都立梅ヶ丘病院、兵庫県こころのケアセンター等を経て、2021年よりJICAヨルダン事務所・ヨルダン保健省精神保健政策アドバイザーを務めている。