(第8回)JICAヨルダン青少年精神保健プロジェクト(1)

紛争・災害と子どものこころのケア――世界の精神保健の現場から(田中英三郎)| 2023.05.02
2022年ロシアによるウクライナ侵攻は日本に住む私たちにも大きな衝撃を与えました。また、新型コロナウイルスのパンデミックや自然災害など、私たちの日常を一変させる出来事がいつやってくるかは予想もつきません。こういった出来事はすべての人々のこころに暗い影を落としますが、特に子どものこころへの影響は計り知れません。この連載では、世界と日本の現場から、子どもたちのこころの健康を保つためにどんなことがされているのか、レポートしていきます。

(毎月上旬更新予定)

プロジェクトの立ち上げ

今月は、JICAヨルダン事務所の「難民を含む子どもに対するコミュニティレベルの精神保健・心理社会的支援の強化プロジェクト(以下、本プロジェクト)」についてお話いたします。

はじまりは、2019年、当時JICAヨルダン事務所で企画調査員をされていた一志(いちし)理沙さんが、私が以前にJICA中国事務所で精神保健プロジェクトに関わっていたという縁を手繰って、前任地である兵庫県こころのケアセンターに来ていただいたところからです。その時に、ヨルダンでのシリア難民を含む青少年のメンタルヘルスに関するプロジェクトの可能性について相談を受けました。

そして、年が明けた2020年2月末には、本プロジェクトの実現可能性をはかるため、約1週間の現地ヨルダン調査に赴きました。この調査では、シリア難民のキャンプであるザアタリキャンプ、公立学校、プライマリーヘルスケアセンターを訪問し、視察とインタビューを実施しました(写真1)。また、ヨルダンで精神保健に関わる活動をすでに実施中である他団体(ドイツ国際協力公社、インターナショナル・メディカル・コープス、WHO等)とも情報交換を行いました。

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田中英三郎(たなか・えいざぶろう)
2001年愛媛大学医学部を卒業、精神科医師。ユニバーシティカレッジロンドン(UCL)等で社会疫学を研究、公衆衛生学修士、博士(医学)。国立国際医療研究センター、国境なき医師団、都立梅ヶ丘病院、兵庫県こころのケアセンター等を経て、2021年よりJICAヨルダン事務所・ヨルダン保健省精神保健政策アドバイザーを務めている。