(第3回)2035 年 EU 新車ゼロエミッション目標の着地点と今後の展望(橋本択摩)

ヨーロッパの直面するエネルギー危機| 2023.02.13
2022 年 2 月、ロシアがウクライナに侵攻したことにより、世界的にエネルギー価格が上昇する事態となりましたが、その中でも最も深刻な影響を受けているのがヨーロッパです。エネルギー危機に直面し大混乱に陥っているヨーロッパは、今後も脱炭素化・EV化を進めていくことができるのでしょうか。また深刻なインフレや財政・金融の問題にも注目が集まります。4名の EU 研究者が読み解いていきます。

(全 10 回の予定)

$\def\COii{\text{CO}_2}$

EU では、ウクライナ危機を背景としたエネルギー価格の高騰により、短期的には石炭火力発電への需要が高まるなど葛藤も見られている。しかし、それでも中長期的なカーボンニュートラルへの野心は揺らいでいない。EU の「欧州グリーンディール」戦略は、もはや気候変動対策としての「脱炭素化」だけでなく、「脱ロシア化」に向けた重要な手段ともなっている。つまり、「脱ロシア化」が「脱炭素化」に直結している点が、EU のカーボンニュートラル実現への中長期的目標にブレがない大きな理由となっている。

EU のカーボンニュートラル政策の議論は、時間軸に分けて見ることが大切だ。2050 年のカーボンニュートラル実現に向けた長期的な野心が不変であることは間違いない。一方、短期的には、エネルギー安全保障に向けて背に腹は代えられず、$\COii$ を多く排出する石炭への回帰など産業政策が優先となっていることも疑いはない。

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橋本択摩(はしもとたくま)
国際経済研究所上席研究員
2000 年東京大学経済学部卒、第一生命保険入社。第一生命経済研究所、財務省財務総合政策研究所、国際金融情報センター・ブラッセル事務所への出向等を経験。2013 年より三井物産戦略研究所、ベネルックス三井物産 (ブリュッセル駐在)、三菱総合研究所を経て、2021 年 9 月より現職。EU 産業政策、環境・エネルギー政策を中心に調査・分析を実施。ベルギー駐在通算 7 年。