(第1回)商業集積のメカニズムとは:築地時代の東京仲卸市場店舗抽選からの発見

歩いて学ぶ都市経済学(中島賢太郎・手島健介・山﨑潤一)| 2022.10.26
都心に高層オフィスビルが林立しているのはなぜ? 原宿にアパレルショップが集中しているのはなぜ? この連載では、日本各地の都市で見られる何気ない風景の「なぜ」を取り上げ、その背後にあると考えられる経済学的メカニズムを解説するとともに、そのメカニズムをデータを使って検証した最先端の実証研究を紹介していきます。

(毎月下旬更新予定)

はじめに

この連載を読んでいただいている活字好きのあなたはきっと古本屋を巡ったことがあるに違いない。古本屋は日本各地に存在しているが、そんな中でも東京神保町は今でも 100 軒を超える古書店が軒を連ねる世界有数の古書店街である。

このように同じ業種の店舗が地理的に集まる現象は、神保町の古書店に限らず様々な地域、業種で見られるものである。例えば神保町の近所、駿河台下から神田小川町交差点付近にはスポーツ用品店、浅草のかっぱ橋には調理器具店、目黒通りにはアンティーク家具店、といった具合に、それぞれにこだわりを持った客を満足させるような魅力的な街並みが形成されている。このような都市内における同業種の店舗集積は、東京に限らず大阪のアメリカ村の古着店街のように他の日本の都市でも見られるし、世界中の都市でもよく見られることである。

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中島賢太郎 (なかじま・けんたろう)
一橋大学イノベーション研究センター准教授。東京大学大学院経済学研究科博士後期課程修了、博士 (経済学)。東北大学大学院経済学研究科准教授などを経て、2017年より現職。都市経済学・空間経済学を専門とする。スマートフォンGPSデータや歴史的データなど、幅広いデータを用いた実証研究を行っている。
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手島健介 (てしま・けんすけ)
一橋大学経済研究所教授。コロンビア大学経済学部博士課程修了 (Ph.D.)。メキシコ自治工科大学経済研究所助教授などを経て、2022年より現職。主にメキシコと日本のミクロデータをもとに、グローバリゼーションおよび都市にまつわる諸問題を研究している。
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山﨑潤一 (やまさき・じゅんいち)
神戸大学大学院経済学研究科講師。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス (LSE) 博士課程修了 (Ph.D.)。神戸大学大学院経済学研究科助教などを経て、2021 年より現職。開発経済学、応用ミクロ計量経済学を専門とする。明治期の鉄道や江戸期の農業投資など、日本の歴史的データを用いた実証研究を多く行っている。
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※本連載は、共同執筆です。著者順は慣例に従いアルファベット順としています。