(第2回)生産活動の集積のメカニズムとは:ビットバレーと町工場の風景から

歩いて学ぶ都市経済学(中島賢太郎・手島健介・山﨑潤一)| 2022.11.25
都心に高層オフィスビルが林立しているのはなぜ? 原宿にアパレルショップが集中しているのはなぜ? この連載では、日本各地の都市で見られる何気ない風景の「なぜ」を取り上げ、その背後にあると考えられる経済学的メカニズムを解説するとともに、そのメカニズムをデータを使って検証した最先端の実証研究を紹介していきます。

(毎月下旬更新予定)

はじめに

東京湾沿岸にきらめく工場の夜景は、日本三大工業地帯の 1 つである京浜工業地帯を代表する風景の 1 つである。その周縁、特に東京都大田区や神奈川県川崎市には今も多くの中小製造業者、いわゆる町工場の集積があり、京浜工業地帯の工業生産を下支えしている。このような工場の地理的集中は、東大阪や新潟県の燕市、三条市など東京以外の各地にも見られる現象である。

場所を変えて渋谷の町を歩いてみよう。かつてファッション・カルチャーの町だった渋谷は、2000 年代からビットバレーとも呼ばれるようになり、再開発の進む現在は IT 企業の集積地へと変貌した。いまや再開発の進む渋谷駅の東口には高層のオフィスビルが立ち並んでおり、その中には名だたるIT企業のオフィスがテナントとして軒を連ねている。同じような新興企業のオフィスの集積は、六本木などでも見られる現象である。このように、前回見たような小売店のみならず、製造業や情報通信業などについても、その立地は地理的に集中しているのである。

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中島賢太郎 (なかじま・けんたろう)
一橋大学イノベーション研究センター准教授。東京大学大学院経済学研究科博士後期課程修了、博士 (経済学)。東北大学大学院経済学研究科准教授などを経て、2017年より現職。都市経済学・空間経済学を専門とする。スマートフォンGPSデータや歴史的データなど、幅広いデータを用いた実証研究を行っている。
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手島健介 (てしま・けんすけ)
一橋大学経済研究所教授。コロンビア大学経済学部博士課程修了 (Ph.D.)。メキシコ自治工科大学経済研究所助教授などを経て、2022年より現職。主にメキシコと日本のミクロデータをもとに、グローバリゼーションおよび都市にまつわる諸問題を研究している。
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山﨑潤一 (やまさき・じゅんいち)
神戸大学大学院経済学研究科講師。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス (LSE) 博士課程修了 (Ph.D.)。神戸大学大学院経済学研究科助教などを経て、2021 年より現職。開発経済学、応用ミクロ計量経済学を専門とする。明治期の鉄道や江戸期の農業投資など、日本の歴史的データを用いた実証研究を多く行っている。
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※本連載は、共同執筆です。著者順は慣例に従いアルファベット順としています。