国民審査の憲法理論 に向けて :最高裁令和4年5月25日大法廷判決(木下昌彦)

判例時評(法律時報)| 2022.08.03
一つの判決が、時に大きな社会的関心を呼び、議論の転機をもたらすことがあります。この「判例時評」はそうした注目すべき重要判決を取り上げ、専門家が解説をする「法律時評」の姉妹企画です。
月刊「法律時報」より掲載。

(不定期更新)

◆この記事は「法律時報」94巻9(2022年8月号)に掲載されているものです。◆

 最高裁令和4年5月25日大法廷判決

1 はじめに

2022(令和4)年5月25日、最高裁判例における法令違憲のリストに11番目の判決が加わった(以下、本判決)1)。1998年の公職選挙法改正により在外選挙制度が創設され、2005年の最高裁による違憲判決を経てもなお、最高裁判所裁判官の国民審査については、在外国民に審査権の行使を認める制度が設けられないままであった2)。これに対し、本判決は「国民審査法が在外国民に審査権の行使を全く認めていないことは、憲法15条1項、79条2項、3項に違反する」と判断したのである。 国民審査は、国政選挙と比較すれば、各種の報道はもちろん、憲法学説においても日陰的存在であったことは疑いがない。ただ、本判決が強調したように国民審査は選挙権と並ぶ重要な国民の権利であり、司法権の民主的統制という学説的にもより一層深く探求すべき課題と結び付いている。そのなかで、国民審査の意義や性格について最高裁として一つの判断を示した本判決は、在外国民の国民審査の問題だけでなく、広く、国民審査そのものを考察する重要な契機となり得る要素を有している。そこで本稿では、本判決から国民審査についての憲法理論の発展へと繋げる一つの試みを行うものである。

なお、本稿では、まず国民審査に関する本判決の憲法論を確認したうえで、国民審査の現代的役割と本判決を受けた国民審査への向き合い方を論じていきたい。

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脚注   [ + ]

1. 最大判令和4年5月25日判例集未登載。筆者は、4月20日に開かれた最高裁大法廷での本件事案の弁論を傍聴する機会を得た。とりわけ原告の弁護団長を務めた吉田京子弁護士の弁論は心を打つものがあったが、その内容については、木下昌彦「2022年4月20日最高裁大法廷にて」researchmap研究ブログを参照頂きたい。
2. 最大判平成17年9月14日民集59巻7号2087頁。