(第14回)当たるも当たらぬも

人文的な数学の話(井ノ口順一)| 2022.01.18
文学を読んでいても,人文・社会系の本を読んでいても,ついつい数学の目で見てしまい,いつの間にか話が数学になってしまいます.意外や意外,数学の話題が溢れているのです.数学者になってしまったばかりに気になってしまうことを日常生活のひとこまや読書を通じてご紹介していきます.ときどきはディープな話題に迷い込むかもしれません.
$\def\t#1{\text{#1}}\def\dfrac#1#2{\displaystyle\frac{#1}{#2}}$

講談社学術文庫は、品切れになっていた学術書を文庫版で再刊しています.人文社会系の本が多いですが,自然科学の本も出ています.「えっ あの本が」と驚くことがしばしばあります.たとえば,「興亡の世界史シリーズ」が学術文庫に入ったことで購入しやすくなりました.入手が難しく困っていた佐藤満彦著『ガリレオの求職活動 ニュートンの家計簿—科学者たちの生活と仕事』デッラ・ポルタ著『自然魔術』が刊行されたり,長田順行著『暗号大全 原理とその世界』が出たり.現代新書で品切になっていた森枝卓士著『カレーライスと日本人』が出たり (この本の姉妹書ともいえる『カレーライスがやってきた』,福音館,たくさんのふしぎ 1988年12月号は単行本にならないものでしょうか).最も驚いたのは二畳庵主人 (加地伸行) 著『漢文法基礎 本当にわかる漢文入門』が出たときでしょうか.高校生の頃,増進会旬報 (Z 会の通信添削会員に送られてきた冊子) で二畳庵主人のエッセイを読んでいたので大変懐かしく感じました.その頃は加地先生が二畳庵主人だとは知る由もなかったのですが (旬報に連載していたエッセイ,単行本にならないでしょうか.加地先生).

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井ノ口順一(いのぐち・じゅんいち)
1967 年千葉県銚子市生まれ.東京都立大学大学院理学研究科博士課程数学専攻単位取得退学.現在,筑波大学数学域教授.
教育学修士(数学教育), 博士(理学).専門は可積分幾何・差分幾何.
著書に『リッカチのひ・み・つ---解ける微分方程式の理由を探る』(日本評論社, 2010),『どこにでも居る幾何---アサガオから宇宙まで』(日本評論社, 2010),『曲線とソリトン』(朝倉書店, 2010),『常微分方程式NBS』(日本評論社,2015),『初学者のための偏微分∂を学ぶ』(現代数学社,2019)等.
日本カウンセリング・アカデミー修了, 星空案内人(準案内人), 日本野鳥の会会員.