(第4回)東方の夢

人文的な数学の話(井ノ口順一)| 2021.01.14
文学を読んでいても,人文・社会系の本を読んでいても,ついつい数学の目で見てしまい,いつの間にか話が数学になってしまいます.意外や意外,数学の話題が溢れているのです.数学者になってしまったばかりに気になってしまうことを日常生活のひとこまや読書を通じてご紹介していきます.ときどきはディープな話題に迷い込むかもしれません.

タイトルを見てシェイクスピア劇『アントニーとクレオパトラ』のセリフ “我が喜びは東方にある”  (In the east my pleasure lies,小田島雄志〔訳〕)が頭に浮かんだ読者もおられるでしょうか.今回,読んだ本は『東方の夢.ボナパルト,エジプトへ征く(新版)』 (両角良彦,朝日選書,1992) です.サブタイトルから察しがつくようにナポレオンの戦争,エジプト遠征を語る本です.書棚の整理のときに,この本に目が止まりました.手塚治虫,『陽だまりの樹』(小学館文庫版の2巻,1995) の表紙カバー (第2回遣欧使節一行の記念撮影,元治元年(1864年)) を思い出したり,他の文献[1]も併読したりと,整理の途中なのに,ついつい読みふけってしまいました.

このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。→ . 会員登録(無料)はお済みですか? 会員について

井ノ口順一(いのぐち・じゅんいち)
1967 年千葉県銚子市生まれ.東京都立大学大学院理学研究科博士課程数学専攻単位取得退学.現在,筑波大学数学域教授.
教育学修士(数学教育), 博士(理学).専門は可積分幾何・差分幾何.
著書に『リッカチのひ・み・つ---解ける微分方程式の理由を探る』(日本評論社, 2010),『どこにでも居る幾何---アサガオから宇宙まで』(日本評論社, 2010),『曲線とソリトン』(朝倉書店, 2010),『常微分方程式NBS』(日本評論社,2015),『初学者のための偏微分∂を学ぶ』(現代数学社,2019)等.
日本カウンセリング・アカデミー修了, 星空案内人(準案内人), 日本野鳥の会会員.