(第5回)明月記

人文的な数学の話(井ノ口順一)| 2021.02.15
文学を読んでいても,人文・社会系の本を読んでいても,ついつい数学の目で見てしまい,いつの間にか話が数学になってしまいます.意外や意外,数学の話題が溢れているのです.数学者になってしまったばかりに気になってしまうことを日常生活のひとこまや読書を通じてご紹介していきます.ときどきはディープな話題に迷い込むかもしれません.

平成10年代前半に福岡市に住んでいた頃に足しげく通った「カメラのゴゴー商会」の目の前に冷泉公園れいせんこうえんという公園が (冷泉町れいせんまちでなく上川端町に) あります.冷泉は博多の人魚伝説 (1222 年,博多湾で人魚が網にかかり,勅使,冷泉大納言が来博) に由来すると言われています.冷泉大納言は誰のことなのかは謎のようです.冷泉家の祖,冷泉為相は 1263 年生まれ.父は藤原定家の子,藤原為家 (1198–1275) です.藤原定家の日記が明月記です.

2019 年 11 月に刊行された稲村榮一,『定家『明月記』の物語.書き留められた中世』(ミネルヴァ書房) を読もうと思いながら,なかなか読めずにほぼ 1 年が経過した 2020 年 10 月,岩波新書から『藤原定家『明月記』の世界』(村井康彦) が出版されました.会議等に追われる日々の中,僅かな空き時間に,この 2 冊を読み始めました.村井先生の著書は,定家の人物像,日々の生活をドキュメンタリーの如く,解説しています.稲村先生の本を読み進めると,ついつい気になる箇所がありました (活字に組んだ原文を [1] で見ることができます).

このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。→ . 会員登録(無料)はお済みですか? 会員について

井ノ口順一(いのぐち・じゅんいち)
1967 年千葉県銚子市生まれ.東京都立大学大学院理学研究科博士課程数学専攻単位取得退学.現在,筑波大学数学域教授.
教育学修士(数学教育), 博士(理学).専門は可積分幾何・差分幾何.
著書に『リッカチのひ・み・つ---解ける微分方程式の理由を探る』(日本評論社, 2010),『どこにでも居る幾何---アサガオから宇宙まで』(日本評論社, 2010),『曲線とソリトン』(朝倉書店, 2010),『常微分方程式NBS』(日本評論社,2015),『初学者のための偏微分∂を学ぶ』(現代数学社,2019)等.
日本カウンセリング・アカデミー修了, 星空案内人(準案内人), 日本野鳥の会会員.