『建設業法と建設業許可―行政書士による実務と解説』(編:日本行政書士会連合会)

一冊散策| 2020.10.13
新刊を中心に,小社刊行の本を毎月いくつか紹介します.

行政書士の目線で読みやすくまとめられた本:『建設業法と建設業許可』を読んで

『建設業法と建設業許可』を実際に活用されている鈴木正子先生に、内容について感想を伺いました。

Q 建設業とは業務としてどのように関わっていますか?

前職がゼネコン関係会社で、建設業は開業当初から手掛けております。当初は、建設業許可関係業務は新人行政書士が受任して入り込むスキは無いと言われたこともありましたが、徐々に業務を取り扱ううちに、そうではないと分かりました。開業から5年となろうとしていますが、現在においては、事務所の中心的な業務となっております。

Q 本書をのように活用されていますか?

申請自体は手引きや先輩書士に聞きながら行っていましたが、業法については詳しく分かっていなかった部分も多く、その理解なくお客様に適切に説明ができないことを感じていました。今までも、しっかり勉強しなければと分厚い建設業の本を2冊購入しましたが、読破できず挫折していました。この本は、自身が申請業務を行う上で知っておくべきところが、行政書士の目線でも読みやすくまとめられているため、一気に読むことができました。多彩な事例や理解しやすい図解もあり、ページ数も多すぎてもなく、ボリュームもちょうど良いですね。

特に、当たり前のように申請に添付している書類について、それが必要な理由が分かる記述もあり、とても納得できました。許可申請時に審査担当にいかにわかってもらうかの工夫については、ぜひ取り入れたい考えと思いました。また、法律改正の沿革では、今までの経緯を見渡すことができました。建設業の基本的なことが網羅され、本当に良書だと思います。

Q 改訂にあたって期待したい点はありますか?

業法の改正点について現状においては不明確な点も多く、お客様に対してうまく情報を伝えられていませんので、やはり、正確な改正点の情報を載せていただけたらと思います。

外国人との関係や、建設キャリアアップシステムについてなども説明があるといいですね。

鈴木正子(東京都行政書士会、ブロッサム東京行政書士事務所)

 

『建設業法と建設業許可』はじめに

本書のテーマとする建設業は、国民の多くが従事する基幹産業であり、社会インフラの整備など、国民にとって無くてはならない産業であります。また、全国約4万8000名の行政書士にとっても、建設業関係業務に従事する会員は最も多く、基幹業務の大きな柱の一つとなっています。

行政書士は、行政書士法1条に、「この法律は、行政書士の制度を定め、その業務の適正を図ることにより、行政に関する手続の円滑な実施に寄与し、あわせて、国民の利便に資することを目的とする。」と定められる通り、昭和26年の行政書士法制定以来、約70年にわたって、常に国民に寄り添い、国民と官公署、あるいは民々間のパイプ役として、権利の実現などを通じて社会に貢献してまいりました。法1条の2、1条の3に行政書士の業務が定められていますが、これを要約するならば、一定の制限のもとで、①官公署に提出する書類(電磁的記録の作成を含む。)の作成、②権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類・電磁的記録の作成を含む。)の作成、③官公署に提出する書類を官公署に提出する手続の代理、④官公署に提出する書類に係る許認可等に関して行われる聴聞又は弁明の機会の付与の手続その他の意見陳述のための手続における代理、⑤行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続の代理、及びその手続における書類作成を法定の業務範囲としていることがわかります。

近年、社会構造が大きく変化し、国民の権利意識が高まる中で、行政書士への期待は、法定業務にとどまることなくこれに関係する周辺業務へ広がりをみせているといえます。例えば、本書がテーマとしている建設業関係においても、単に官公署に対する書類作成や手続にとどまらず、建設関係法令やコンプライアンスに関しての指導、建設労働者等に係る労務管理、経営事項審査におけるアドバイスや経営指導、工事請負契約をはじめとする多種多様な契約に係る指導、海外進出などに関する指導など、枚挙に暇がありません。また、改正入管法の成立により、建設業にも多くの外国人労働者が従事することが想定される中、これまでも長きに渡り外国人の出入国関係手続で揺るぎない実績を上げてきた行政書士に大きな期待が寄せられています。

これらのことは、その時代の変革の中で行政書士に対しては、その幅広い業務範囲による知識によりコンサルタントとしてのさらなる活躍が期待されるとともに、建設企業担当者の皆様にとっても、これらの周辺知識が欠かせないものになっていると思います。

本書では、ページの制約から、これらの全てを網羅することはできませんでしたが、建設業法を中心に俯瞰しながら、特に行政処分事例や判例も交えた法令やコンプライアンス関連知識と、建設業における契約関係に踏み込んで取り上げた、これまでにない構成の書籍に仕上がりました。建設業関係業務を行う行政書士のみならず、建設業に関わる弁護士や税理士、社会保険労務士等の士業者、また、企業実務に携わる担当者様にとっても、必ずや職務における座右の書となるものと自負しております。ぜひとも、手に取っていただき、読者の皆様の職務にお役立ていただき、建設業法の目的の一つである建設業界の健全な発展の一助となれば幸いであります。

最後に、本書の発刊にあたり、お忙しい中にもかかわらず多大なご尽力をいただいた執筆者の皆様、編集にあたっていただいた許認可業務部・建設環境部門の村山次長をはじめとする先生方、調整をいただいた専門員の田中先生、慣れない作業に何度も熱心にサポートをいただきました荻原様、武田様をはじめとする株式会社日本評論社の方々に心から感謝申し上げます。

平成31年2月
日本行政書士会連合会
許認可業務部部長 矢野浩司

 

目次

序章 建設業法の成立と沿革
1 建設業法の制定/2 建設業法の改正概要

第1章 建設業許可制度
1 建設業の許可(法2条~4条)/2 一般建設業の許可(法5条~8条)/3 特定建設業の許可(法15条~17条)

第2章 技術者制度
1 技術者制度とは/2 各種制度における技術者の位置づけ/3 建設キャリアアップシステムについて
・ある監理技術者の体験

第3章 請負契約
1 工事請負契約とは/2 法上の対等な立場と現実の元下関係/3 契約書への記載事項/4 契約書の無い工事の違法性とみなし契約/5 契約変更/6 現場代理人と監督員/7 不当な契約/8 見積り/9 一括下請負の禁止/10 瑕疵担保責任/11 元請負人の義務
・日本経済のダイナモ、公共工事――日本の型枠にはまらないマンデル・フレミング理論

第4章 建設業界の将来展望――建設産業政策2017+10から展望する
1 建設産業政策2017+10とは/2 建設産業政策2017+10の背景/3 働き方改革から見た「建設産業政策2017+10」における具体的施策/4 「建設産業政策2017+10」のその他の施策/5 まとめ 中央建設業審議会・社会資本整備審議会

書誌情報など