(第21回)軽微な別件(窃盗事件)で逮捕・勾留・起訴した上、この起訴後勾留を利用して長期 間本件(強盗殺人)を厳しく追及し虚偽自白させた─仁保事件(1)

捜査官! その行為は違法です。(木谷明)| 2020.05.13
なぜ誤った裁判はなくならないのか――。
警察官、検察官の証拠隠しや捏造、嘘によって、そしてそれを見抜かなかった裁判所によって、無実の人が処罰されてしまった数々の冤罪事件が存在します。
現役時代、30件以上の無罪判決を確定させた元刑事裁判官・木谷明氏が、実際に起こった事件から、刑事裁判の闇を炙り出します。

(毎月中旬更新予定)

本件は、第19回第20回に紹介した八海事件の約2年9月後に、同じ山口県下で発生した重大冤罪事件である。1・2審の死刑判決が最高裁で破棄差し戻され、最終的に無罪判決が確定した点でも八海事件と似た経過を辿っている。その上、批判されるべき問題点も多数あるので、八海事件と同様、2回に分けて紹介する。

仁保(にほ)事件

・山口地判昭和37年6月15日下刑集4・5巻6号524頁
・広島高判昭和43年2月14日判時528号3頁
・最判昭和45年7月31日判時598号37頁
・広島高判昭和47年12月14日判時694号16頁

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木谷 明(きたに・あきら 弁護士)
1937年生まれ。1963年に判事補任官。最高裁判所調査官、浦和地裁部総括判事などを経て、2000年5月に東京高裁部総括判事を最後に退官。2012年より弁護士。
著書に、『刑事裁判の心―事実認定適正化の方策』(新版、法律文化社、2004年)、『事実認定の適正化―続・刑事裁判の心』(法律文化社、2005年)、『刑事裁判のいのち』(法律文化社、2013年)、『「無罪」を見抜く―裁判官・木谷明の生き方』(岩波書店、2013年)など。
週刊モーニングで連載中の「イチケイのカラス」(画/浅見理都 取材協力・法律監修 櫻井光政(桜丘法律事務所)、片田真志(古川・片田総合法律事務所))の裁判長は木谷氏をモデルとしている。