(第19回)捜査・公判を通じ捜査側の多くの違法行為が介在し、最高裁の判決自体も二転三転し、18年目にしてようやく無罪判決が確定した戦後最大の冤罪事件―八海事件(1)

捜査官! その行為は違法です。(木谷明)| 2020.03.16
なぜ誤った裁判はなくならないのか――。
警察官、検察官の証拠隠しや捏造、嘘によって、そしてそれを見抜かなかった裁判所によって、無実の人が処罰されてしまった数々の冤罪事件が存在します。
現役時代、30件以上の無罪判決を確定させた元刑事裁判官・木谷明氏が、実際に起こった事件から、刑事裁判の闇を炙り出します。

(毎月中旬更新予定)

老夫婦を殺害して金品を奪った強盗殺人事件について、単独で実行した旨自白した被疑者に対し無理な取調べをした結果、「5人共犯」の自白をさせて5名全員を起訴した上、第1次差戻し後の控訴審では、真実のアリバイを述べる家族を偽証罪で逮捕・勾留の上起訴するなど、重大な違法捜査が多数行われた。

八海(やかい)事件

  • ① 山口地裁岩国支判昭和27年6月2日判時127号53頁
  • ② 広島高判昭和28年9月18日判時127号56頁
  • ③ 最3小判昭和32年10月15日判時127号3頁
  • ④ 広島高判昭和34年9月23日判時201号10頁
  • ⑤ 最1小判昭和37年5月10日判時300号4頁
  • ⑥ 広島高判昭和40年8月30日判時432号10頁
  • ⑦ 最2小判昭和43年10月25日判時533号14頁
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木谷 明(きたに・あきら 弁護士)
1937年生まれ。1963年に判事補任官。最高裁判所調査官、浦和地裁部総括判事などを経て、2000年5月に東京高裁部総括判事を最後に退官。2012年より弁護士。
著書に、『刑事裁判の心―事実認定適正化の方策』(新版、法律文化社、2004年)、『事実認定の適正化―続・刑事裁判の心』(法律文化社、2005年)、『刑事裁判のいのち』(法律文化社、2013年)、『「無罪」を見抜く―裁判官・木谷明の生き方』(岩波書店、2013年)など。
週刊モーニングで連載中の「イチケイのカラス」(画/浅見理都 取材協力・法律監修 櫻井光政(桜丘法律事務所)、片田真志(古川・片田総合法律事務所))の裁判長は木谷氏をモデルとしている。