(第18回)原始根の神秘

数学の泉(高瀬正仁)| 2020.03.04
数学に泉あり。数学は大小無数の流れで構成されていて、今も絶え間なく流れ続けている雄大な学問ですが、どの流れにも源泉があり、しかもその源泉を作った特定の人物が存在します。共感と共鳴。数学の泉の創造者たちの心情と心を通わせることこそが、数学を理解するという不思議な体験の本質です。そこで数々の泉を歴訪して創造の現場に立ち会って、創造者の苦心を回想し、共感し、共鳴する糸口を目の当たりにすることをめざしたいと思います。

(毎月上旬更新予定)

$\def\dfrac#1#2{{\displaystyle\frac{#1}{#2}}}\def\t#1{\text{#1}}$

原始根とは

17世紀のはじめにフェルマが発見した数論のいろいろな真理の中に,今日の語法で「フェルマの小定理」と呼ばれている定理があります.それは素数に関する命題で,$p$ は奇素数とし,$a$は$p$で割り切れない数とするとき,合同式
\begin{align*}
a^{p-1} \equiv 1~(\mathrm{mod}.p)
\end{align*}が成立することが主張されています.もっとも合同式の記号を提案したのはガウスですし,フェルマがこのように表記したわけではありません.

このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。→ . 会員登録(無料)はお済みですか? 会員について