(第17回)4件目の「死刑台からの生還」事件─島田事件

捜査官! その行為は違法です。(木谷明)| 2020.01.14
なぜ誤った裁判はなくならないのか――。
警察官、検察官の証拠隠しや捏造、嘘によって、そしてそれを見抜かなかった裁判所によって、無実の人が処罰されてしまった数々の冤罪事件が存在します。
現役時代、30件以上の無罪判決を確定させた元刑事裁判官・木谷明氏が、実際に起こった事件から、刑事裁判の闇を炙り出します。

(毎月中旬更新予定)

島田事件

本件は、事件後2か月半も経過した後、本件について何らの嫌疑もない被告人を軽微な別件で逮捕した上、その供述するアリバイを否定して犯行を無理やり自白させ、死刑判決を受けさせたものである。

  • ① 東京高決昭和58年5月23日判時1079号11頁
  • ② 静岡地決昭和61年5月29日判時1193号35頁
  • ③ 東京高決昭和62年3月25日判時1227号3頁
  • ④ 静岡地判平成元年1月31日判時1316号21頁

1 どういう事件だったのか

本件は、死刑確定囚に対して再審無罪判決が言い渡された4件目の事件である。

昭和29年3月10日、静岡県島田市内のお寺の境内で友だちと遊んでいた当時6歳の幼女(H子ちゃん)が若い男に誘い出され、近くの山林内で殺害された。死体には外陰部裂創、胸部に革皮様化した表皮剥脱、肺出血等の傷害があり、死因は頸部圧迫による扼殺と判断された。

警察は、死体の状況などから、犯人がH子ちゃんを強姦した上で胸を石で叩き、さらに手で首を絞めて殺害したと判断した。

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木谷 明(きたに・あきら 弁護士)
1937年生まれ。1963年に判事補任官。最高裁判所調査官、浦和地裁部総括判事などを経て、2000年5月に東京高裁部総括判事を最後に退官。2012年より弁護士。
著書に、『刑事裁判の心―事実認定適正化の方策』(新版、法律文化社、2004年)、『事実認定の適正化―続・刑事裁判の心』(法律文化社、2005年)、『刑事裁判のいのち』(法律文化社、2013年)、『「無罪」を見抜く―裁判官・木谷明の生き方』(岩波書店、2013年)など。
週刊モーニングで連載中の「イチケイのカラス」(画/浅見理都 取材協力・法律監修 櫻井光政(桜丘法律事務所)、片田真志(古川・片田総合法律事務所))の裁判長は木谷氏をモデルとしている。