インターネット広告のスロット入札での逆淘汰とその解決策

海外論文サーベイ(経済セミナー)| 2019.11.28
 雑誌『経済セミナー』の "海外論文Survey" からの転載です.

(奇数月下旬更新予定)

Arnosti, Nick, Marissa Beck and Paul Milgrom (2014) “dverse Selection and Auction Design for Internet Display Advertising,” Working Paper.

野田俊也

$\def\t#1{\text{#1}}\def\dfrac#1#2{\displaystyle\frac{#1}{#2}}$

パフォーマンス型広告とブランド型広告

「宣伝に使った費用の半分は無駄になる。問題は、どちらの半分が無駄になっているのかわからないことだ」— 宣伝広告の先駆者といわれる 19 世紀の実業家、ジョン・ワナメーカーの言葉である。この言葉によく表されているように、広告の宣伝効果を推定するのは通常とても難しい。とくに、セールや新商品の情報を周知し、消費者からの認知度を高めることを目的とする古典的な「ブランド型広告」では、広告が消費行動に与える直接的影響を観察することができないため、この問題が顕著である。

一方で、近年経済学で盛んに研究されているインターネット広告では、ブランド型広告の他に、広告から直接、広告主の商品販売ページへジャンプさせ、そこで買い物をしてもらうことを狙う「パフォーマンス型広告」も掲載されている。こちらのタイプの宣伝広告では、広告を見た消費者の行動を追跡することが可能となる。もちろん、この追加的な情報があってなお、正確な宣伝効果の推定は難しいが、ブランド型広告と比較するとはるかに推定しやすいことは間違いない。

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