構造モデルを使わずに構造モデルの出す情報の一部を再生する

海外論文サーベイ(経済セミナー)| 2019.10.03
 雑誌『経済セミナー』の "海外論文Survey" からの転載です.

(奇数月下旬更新予定)

Bonhomme, Stèphane, Thibaut Lamadon and Elena Manresa(2019)”A Distributional Framework for Matched Employer EmployeeData,” Econometrica, 87(3), pp.699–739.

西村仁憲

$\def\Pr{\mathop{\text{Pr}}\nolimits}\def\t#1{\text{#1}}\def\dfrac#1#2{\displaystyle\frac{#1}{#2}}$

1.はじめに

経済学を専攻する学部生・大学院生の方々なら、「EBPM (Evidence Based Policy Making)」という言葉を最近一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。行政機関の中には、エビデンスに基づく政策立案を具現化させるべく非常に積極的な議論・活動を行おうと考えておられるところもあると思う。しかし一方では、「やれと言われてもそもそも一体何をどういう手順でやればいいのかよくわからないし、導入してどのようなメリットがあるのかもよくわからない」という本音をお持ちの機関もあると考えられる。

それぞれの行政機関が置かれている現状はまったく違うことが予想されるため、EBPM 導入の検討を行う際には、それぞれの行政機関の置かれた現状と導入時のデメリットとメリットを十分に考慮することが、活動の持続可能性にとっては必須である。仮にある行政機関で、今後実際に政策の導入・廃止等の判断材料とするため、データによる分析を行う段階となれば、アナリストは現状明らかにするべきポイントを理解し、分析計画を作成することになる。その際に、アナリストは使えるデータの制約、時間的な制約等に直面することが予想され、必然的にそれらの制約内で現状使える分析方法を選択していくこととなるだろう。そのような状況下で選択した方法で行われた分析結果を解釈する場合に、十分に留意しなければならない点が出てくることもあるだろう。

このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。→ . 会員登録(無料)はお済みですか? 会員について