(第9回)2019 年欧州議会選挙 — EU 懐疑派躍進という誤解

EUの今を読み解く(伊藤さゆり)| 2019.06.26
2019 年は EU にとって、イギリス離脱のほか、5 年に 1 度の欧州議会選挙、それに伴う EU の行政執行機関・欧州委員会のトップにあたる委員長の交代と体制の刷新、さらに首脳会議常任議長(通称、EU 大統領)、欧州中央銀行(ECB)総裁も交代するという大変革の年です。このコラムでは、こういったイベントを軸に EU の今を読み解いていきます。

(毎月下旬更新予定)

5 月に欧州連合(EU)に加盟する 28 カ国で実施された 5 年に 1 度の「欧州議会」選挙では、EU に懐疑的な立場をとる政治勢力がどこまで躍進するかが注目された。

その結果を振り返る前に、EU 懐疑派が欧州議会で議席を伸ばすことがなぜ問題なのか、そもそも欧州議会はどのような役割を担っているのかを確認しておこう。

欧州議会における EU 懐疑派の躍進が懸念されるのは、その役割が、EU の統合の深化とともに拡大してきたからだ。当初は、諮問的な役割に留まっていた欧州議会が、現在では、EU 加盟国の閣僚レベルの代表で構成される閣僚理事会とともに EU の立法を共同決定する機関となっている。EU では立法・政策の提案、予算の策定、対外的な交渉などは、行政執行機関である「欧州委員会」が担う。一方、欧州議会は、「閣僚理事会」とともに、欧州委員会からの提案を受けて、法案、予算、条約の承認を行う。

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