(第11回)ジョンソン新首相はなぜ「合意なき離脱」に突き進むのか?

EUの今を読み解く(伊藤さゆり)| 2019.08.27
2019 年は EU にとって、イギリス離脱のほか、5 年に 1 度の欧州議会選挙、それに伴う EU の行政執行機関・欧州委員会のトップにあたる委員長の交代と体制の刷新、さらに首脳会議常任議長(通称、EU 大統領)、欧州中央銀行(ECB)総裁も交代するという大変革の年です。このコラムでは、こういったイベントを軸に EU の今を読み解いていきます。

(毎月下旬更新予定)

7 月に英国で誕生したジョンソン新政権が、EU からの「合意なき離脱」に突き進もうとしている。ジョンソン首相は、保守党の党首選の段階から、「合意があろうとなかろうと」10 月 31 日の期限通りに離脱すると主張、首相就任後も考えを変えていない。ジョンソン首相は、「より良い条件」による「合意あり離脱」が望ましいとしてはいるが、「離脱協定からのアイルランドの国境の開放を維持するための安全策(バックストップ)の削除」1)の条件としているために、EU との交渉再開の目途は立たない。期限内の「合意あり離脱」はほぼ不可能な情勢だ。

他方、現在、夏季休会中の英国議会は、9 月 3 日に再開されるが、野党は政権の不信任決議を求める動議を提出し、「合意なき離脱」阻止に動く構えだ。

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脚注   [ + ]

1. アイルランドの安全策を強硬離脱派が嫌う理由については、第 7 回「2 度の延期で英国の EU 離脱はどうなるか」をご参照下さい。