(対談)市民社会とインテリジェンスを考える(齋藤裕・田島泰彦)
齋藤裕(弁護士)
田島泰彦(元上智大学教授)
1 はじめに
齋藤 弁護士の齋藤裕と申します。日本弁護士連合会で、特定秘密保護法や国家情報会議などの調査や検討を行っております。今日はよろしくお願いします。
田島 田島と申します。上智大学でメディア法を中心に研究・教育に携わってきました。実は齋藤さんには、前の秘密保護法、つまり旧民主党時代に用意された秘密保全法案について研究会を作ったとき来ていただきました。齋藤さんたち弁護士のグループには、コメンタール的な法案の解説をしていただき、本の形でまとめました。1)その後、法案は自公政権の下で特定秘密保護法として通り、残念ではありましたが、そのような経緯の中で知り合いました。
2 国家情報会議設置法案の現状
田島 さて、国家情報会議設置法案については日弁連が、しっかりした意見書を用意しています2)。齋藤さんが中心にまとめられたのだと思います。非常に参考になり有益な意見書でした。また、齋藤さんは「週刊金曜日」の国家情報会議設置法案をめぐる特集3)で、日弁連の意見書や普通の市民の視点も踏まえ、丁寧にまとめておられました。

本対談では、議論になるべき問題について4点ほど提示します。まずは、現状がどうなっているのかを最初に考えてみたいと思います。
今回、提示をしようとしている問題で真っ先に出てきたのが、「国家情報会議設置法案」あるいは「国家情報局法案」とも称すべき法案4)で、これはもうすでに衆議院で可決をして、現在参議院で審議中ということになっています。おそらく今の議席の状況からすると、多数の力で通ってしまう可能性が強いかと思われます。最初にこの法案について、どのような状況になっているのか簡単に議論をしておきたいと思います。
今回の「国家情報会議設置法案」あるいは「国家情報局法案」の位置というものが一体どのようなものなのかということについて、ここで議論ができたらと思います。最初に、今の段階での法案審議の進展状況について、齋藤さんの方で、何か気になるところがありますか。
齋藤 いま参議院の委員会で審議がされていますが、対案・修正案というのがなかなか出てこないという状況は、非常に問題があると思っています。というのは、国民民主党はもともと、自らのスパイ防止法案を出しているわけです。その中で、インテリジェンス機関を監督する第三者機関というものが必要だと主張している。そして立憲民主党も共産党も参政党も、みんな第三者機関が重要だということを言っている。そうすると、少なくとも第三者機関が必要だというところでいうと、共産党から参政党、国民民主党、立憲民主党、みんな同じ意見のはずです。それらが全部くっつけば、今の参議院の勢力からすると、修正案が出て、少なくとも参議院では政府の法案を通させないということは、十分あり得るはずです。ところが、そこが非常に政治的な様々な動きの中で、そういう修正案の提出のような動きもできていないということで、あまりこの法案の問題性というものが理解されていないのではないかと思います。

例えば国民民主党であれば、その法案を作った議員がいるわけですが、その人たちの考えと、党の執行部との考え方が、恐らくズレているのだと思います。第三者機関というものが重要だと考える人は、国民民主党の中にもいるでしょう。しかし、党の執行部の方が政治的な動きをしてしまっていて、法案の問題性についてきちんと検討していないのでしょう。そのような形で、みなさん政治的な動きを中心にしていて、法案の中身についてきちんと議論していない。そのまま閣法として出されたものがそのまま通りそうな状況になっていることは非常に問題があると思っています。
田島 それにも関わると思いますが、私が危惧しているのは、第三者機関、つまり独立的な監視機関の問題というすごく重要な論点です。私はもう少し法案審議の手前のところについて考えています。そもそも今回の枠組みというのは、スパイ防止法云々では必ずしもなくて、要するに「インテリジェンス」というものをどうするのかというより広い枠組みの話であって、その中で、スパイ防止法の位置づけなり、その問題なりはあると考えています。まだインテリジェンスという考え方そのものが、多くの人たちに理解されていない状況があると思います。
脚注
| 1. | ↑ | 田島泰彦・清水勉(編)『秘密保全法批判—脅かされる知る権利』(日本評論社、2013年) |
| 2. | ↑ | 日本弁護士連合会「現在、「スパイ防止法」として制定に向けた動きのあるインテリジェンス機関強化法制及び外国代理人登録制度についての意見書」(2026年2月20日) |
| 3. | ↑ | 「立法事実ない国家情報局法案:監視対象は一般市民に広がり、重大な人権侵害の危険性」(週刊金曜日1566号) |
| 4. | ↑ | 対談収録2026年5月25日時点での情報。同法は5月27日に参議院で可決され、6月3日に公布、施行日は7月31日。 |














