国際コンファレンスの歩き方—発表準備からネットワーキングまで(経済セミナー2026年6+7月号)
世界中から研究者が集う国際学会。「参加すれば憧れのあの研究者に会えるかもしれない」。そんな期待が頭の中で膨らみつつも、「知り合いが誰もいないかも……」「英語での発表や質疑応答は大丈夫だろうか……」「英語で雑談なんてできるのか……」といった不安に襲われ、参加申し込みに二の足を踏んでしまうこともあるかもしれない。
そんな不安を解消し、国際学会デビューに向けてあなたの背中をそっと押すために、行動経済学会第19回大会(2025年12月12日-14日、早稲田大学にて開催)で企画されたトークセッション「国際コンファレンスの歩き方」の内容から、さまざまな経験談やTIPSを共有。
本特集をきっかけに、ぜひ国際学会への第一歩を踏み出してみよう!
イントロダクション
関西学院大学の黒川です。本日は「国際コンファレンスの歩き方」というテーマで、お二人の講演とQ&Aセッションを行っていきたいと思います。登壇いただくのは、東京大学の重岡仁先生と、大阪大学の今井泰佑先生です。重岡先生は応用ミクロ経済学全般、特に医療経済学の実証分析を、今井先生は実験経済学・行動経済学をご専門とされています。
日本経済学会や行動経済学会のような国内の学会やコンファレンス、あるいはセミナーに参加する場合は、指導教員や同級生、先輩・後輩も参加していて知り合いが多いですよね。また、基本的に発表や質疑応答は日本語で行われますし、雑談なども当然日本語です。言語の障壁がなく、その点でも参加しやすいと思います。
一方で、国際学会や国際コンファレンスとなると、そうはいきません。実際に参加するまでは場の雰囲気が想像できず、研究内容をうまく伝えられるのか、発表を聴いて理解できるのか、他の参加者とどうやってコミュニケーションをとればいいのか……。いろいろと不安に思ってしまい、参加申し込みを諦めてしまうということもあるのではないでしょうか。また、意を決して参加したとしても、「あのときこうしておけばよかった……」といった後悔は尽きません。個人的にも、そうした経験はたくさんあります。
そこで今回は、国際的に活躍されている重岡先生と今井先生に、国際学会にどう参加すればよいか、実際に現地でどのように過ごしておられるかをご報告いただき、スキルアップを目指したいと思います。国際コンファレンスでつまずかないように、そこでの歩き方を指南していただきましょう。それでは、まずは重岡先生からご報告いただきます。よろしくお願いします。
気負わず、手の届く目標を立てて、まずは参加してみよう!
はじめに
東京大学の重岡です。よろしくお願いします。黒川さんから、「国際コンファレンスでつまずかないように」というお話がありましたが、私自身がつまずきまくっているので、基本的には失敗談から学んでもらうような形でお話しできればと思います。
黒川さんからは、普段どんなコンファレンスに出ているか、参加に向けてどんな心の準備をするか、ネットワークはどうやってつなげればいいか、気持ちがへこんだときにどうすればいいか、といった内容をリクエストいただきました。ただ正直に言うと、私も若い頃はこういうことをあまり意識していませんでした。今回は、「今考えればこうしておけばよかった」「タイムマシンに乗って昔に戻れるなら、たぶんこうしていただろう」という視点で、反省も込めてお話しします。
私のバックグラウンドは、経済学者としては少し変わっているかもしれません。もともとは東京大学工学部の出身で、そのまま工学で修士課程も修了しました。当時は燃料電池や太陽電池をつくる研究をしていたのですが、化学実験があまり向いていないような気がしたのと、当時は国連に興味があり、そこからコロンビア大学の国際関係論の修士課程に進学しました。そこではじめて経済学に触れる機会があり、これはおもしろいなと思ってコロンビア大学の経済学博士課程に進学し、博士号を取得しました。博士号取得後はカナダのサイモンフレーザー大学に就職して 9 年間そこで教え、2021 年に東京大学公共政策大学院に移籍し現在に至ります。
こんな感じの経歴で、日本の学部でも大学院でも経済学を学んだことがなく、博士課程が終わった時点で 33 歳でした。当時のネットワークといえば、日本人研究者では、たまたま同時期にコロンビア大学に留学していた近藤絢子さん (現在は東京大学社会科学研究所教授) など、5 人くらいしか知り合いがいませんでした。
とはいえ、「海外の博士課程に留学しているのだから、現地の研究者とのネットワークはあるのではないか」と思われるかもしれませんが、当時はクラスメイトも前後の学年と比べて極端に少なく、13 人しかいませんでした。さらに、その中で実証研究をしている人は 4 人だけ。研究仲間と言えるのは、日本人と外国人をあわせても 10 人くらいだったと思います。
それでも、今ではありがたいことにアカデミアの知り合いや研究仲間がたくさんできました。最初は学会に知り合いがいないのは当たり前で、後からでも何とかなります。論文のパブリケーションと同じで、最初からパブリケーションを持っている人は誰もいません。ゼロから 1 つずつ、粘り強く積み上げていくしか道はありません。でも、その過程で心が折れることはないかと問われれば、正直、折れまくっています。今でも、重要な学会に参加する際には、開催の 1 週間くらい前から胃が痛くなるし、飛行機に乗るのも嫌だし、荷造りをしていても楽しくない。でも、実際に現地に着いて知り合いの顔を見たときに、ようやく「ああ、来てよかったな」と思える。毎回、だいたいこんな感じの繰り返しです。
続きは『経済セミナー』(2026年6+7月号通巻750号)で御覧ください
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