『異世界と異界を旅する心理臨床学:6 人のセラピストが漫画・アニメを読み解く』(著:小山智朗・山愛美・菱田一仁・田中史子・不破早央里・上松幸一)
はじめに —— ようこそ「異界」、そして「異世界」へ
「異世界」をテーマにした作品は、いわゆる「異世界(転生)もの」を中心に、近年若者の間で広く楽しまれています。では、「異界」と「異世界」とは何が異なるのでしょうか。そして、この人気の背景には、現代の若者のどのような心の動きがあるのでしょうか。
本書では、6 名のセラピスト(心理臨床家)が、「異界」や「異世界」を描いた漫画・アニメ作品を取り上げ、心理臨床学の視点からその意味を読み解きます。本書の目的は、個々の作品を解説することではなく、作品を通して若者たちの心を理解することです。
執筆者はいずれも少年期・青年期の心理に関心を持つ臨床家であり、それぞれの実践経験と研究視点を持ち寄って、「異世界」と「異界」を多面的に読み解いていきます。読者は、単なる作品紹介にとどまらない「心理臨床学ならでは」の深い洞察を味わうことができるでしょう。
各章は、若者の心理や葛藤を丁寧に辿りながら、読者のみなさんを「異界」や「異世界」の旅へと誘います。自由に旅の行き先を決めるように、関心のある章から自由に読み進めてもらえればと思います。
各章の内容は次の通りです。
第 1 章(小山)「ドラえもんはのび太をどう支えたか ――『異界』と『異世界』という観点から」
本書を読み進めるにあたって、まず「異世界」と「異界」の違いを示します。のび太がドラえもんとの出会いを通じて成長していく過程を検討し、支援のあり方を考察していきます。
第 2 章(山)「我々はどう生きるのか ―― 今再び『千と千尋の神隠し』から学ぶ」
「境界人」として不安定な状態にいる千尋が、湯屋での試練を経て主体的な存在へと変容していく姿を描き出し、同じく「境界人」として揺らぎの中にある現代を生きる我々すべてに、深い示唆を与えてくれます。
第 3 章(菱田)「私たちは、なぜすれ違ってしまうのだろう ――『ハウルの動く城』に見る異界との出会い」
人と人との「すれ違い」の心理を、『ハウルの動く城』を手がかりに論じます。ソフィーとハウルの関係を通して、誤解や衝突を乗り越える契機が「異界」の体験にあることを鮮やかに解き明かしていきます。
第 4 章(田中)「異界の中の異空間 ――『鬼滅の刃』のムゲン(無限=夢幻)考」
『鬼滅の刃』の「無限城」に象徴される異空間を通して、自己愛や永遠の生への渇望といった心理が物語にどう組み込まれているかを分析します。異界の奥に広がる異空間の意味を明らかにした力作です。
第 5 章(不破)「現代の物語の異世界性と推しについて ――『鬼滅の刃』と『推しの子』を手がかりに」
「推し活」が若者にどんな心理的役割を果たすかを論じます。『鬼滅の刃』に、実は「推し活」的な要素もあることを示し、自己肯定感の補完や感情的共鳴をもたらすことを、瑞々しい感性で描き出しています。
第 6 章(上松)「『ジョジョの奇妙な冒険』から考える家族関係と運命」
ジョースター家の物語を通して「守られる存在」から「守る存在」への転換を描き、家族文化が人格形成に及ぼす影響を考察します。児童相談所での臨床経験に基づいた深みを感じさせる章です。
いずれの章も単なる作品紹介ではなく、長年の心理療法の実践に根ざした深い省察に基づいています。「異世界(転生)もの」のファンのみならず、若者の心を理解しようと願う支援者や家族にとっても、貴重な手がかりが得られるでしょう。
みなさまの「異界」、「異世界」への旅路に、素敵な出会いと発見がありますように!
旅先案内人を代表して
小山智朗
目次
第 1 章 ドラえもんはのび太をどう支えたか ――「異界」と「異世界」という観点から:小山智朗
〔コラム 1 〕異世界って何だろう?
第 2 章 我々はどう生きるのか ―― 今再び『千と千尋の神隠し』から学ぶ:山愛美
〔コラム 2 〕「異世界もの」の流行の背景にあるのは?
第 3 章 私たちは、なぜすれ違ってしまうのだろう ――『ハウルの動く城』に見る異界と出会い:菱田一仁
〔コラム 3 〕『シテの花』:能楽の世界への「異世界転生」のあとで
第 4 章 異界の中の異空間 ――『鬼滅の刃』のムゲン(無限=夢幻)考:田中史子
〔コラム 4 〕『宝石の国』:人間性をそぎ落としたユートピアへ
第 5 章 現代の物語の異世界性と推しについて ――『鬼滅の刃』と『推しの子』を手がかりに:不破早央里
〔コラム 5 〕「スプラトゥーン」に見るチート性を帯びないゲーム世界
第 6 章 『ジョジョの奇妙な冒険』から考える家族関係と運命:上松幸一
〔コラム 6 〕なぜ「悪徳令嬢もの」は人を惹きつけるのか
書誌情報
- 小山智朗 ・山愛美 ・菱田一仁 ・田中史子 ・不破早央里・上松幸一 著
- 紙の書籍/電子書籍
- 定価:税込 2,200 円(本体価格 2,000 円)
- 発刊年月:2026年 1 月
- ISBN:978-4-535-56445-9
- 判型:四六判
- ページ数:232 ページ
- 日本評論社で紙の書籍を購入
- Amazonで紙の書籍を購入
- 楽天ブックスで購入
- セブンネットショッピングで購入
- Amazon Kindle版を購入
関連情報

『異世界と異界を旅する心理臨床学』出版記念シンポジウム
「異世界に惹かれる若者たち:セラピストが漫画・アニメを読み解く」

日時:2026 年 3 月 1 日(日)13:00~(受付開始 12:30)
会場:京都先端科学大学 太秦キャンパス 嵯峨野ホール(南館 1F)
大学までのアクセス/キャンパスマップ
要事前申込・参加費無料
▶▶▶申込フォームはこちら◀◀◀
※定員(400 名)になり次第締め切ります。オンライン開催はありません。
第 1 部 3 人の心理療法家が見た異界と異世界
パネリスト 1:ドラえもんに見る異界と異世界 ……小山智朗
パネリスト 2:人気作品「鬼滅の刃」「推しの子」に見る異世界性と「推し」について ……不破早央里
パネリスト 3:異界を旅したジョナサン・ジョセフ・承太郎からみる「家族」とは(「ジョジョの奇妙な冒険」から) ……上松幸一
指定討論 ……山愛美・田中史子
第 2 部 トークセッション(パネリスト×指定討論者) ……司会・コーディネーター 菱田一仁
















