刑事手続における情報通信技術の活用—刑事手続のデジタル化に係る法改正(緑大輔)
法律時評(法律時報)| 2025.10.27
世間を賑わす出来事、社会問題を毎月1本切り出して、法の視点から論じる時事評論。 それがこの「法律時評」です。ぜひ法の世界のダイナミズムを感じてください。
月刊「法律時報」より、毎月掲載。
(毎月下旬更新予定)
◆この記事は「法律時報」97巻12号(2025年11月号)に掲載されているものです。◆
1 デジタル化の改正内容と論点
2025(令和7)年5月16日に、「情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」が国会での修正を経て、可決成立した。その内容は、国会審議でも時間を費やされた電磁的記録提供命令の創設のほか、電磁的記録である証拠の開示、オンラインでの勾留質問・弁解録取、鑑定等に関する証人のオンラインでの尋問、暗号資産等の没収保全に関する手続の整備等、多岐にわたる。他方で、弁護人によるオンラインでの接見に係る制度は導入されなかった。
各論的な検討は別の機会に行うこととして、ここではごく包括的に、立法の過程に関して、2つのことを述べたい。第1が、情報通信技術の活用における弊害(病理)の扱いについてである。第2が、現実の社会における有体物の体系が、無体物たるデジタル・データをも重視した2本立ての体系へと変化している現状をどう受け止めるべきかについてである。私が理解するところでは、いずれも刑事訴訟法学が今後引き受けなければならない悩みになっていくものである。



