【ディスカッション】誰もが活躍できる労働市場をどう実現するか?(経済セミナー2025年2+3月号)

特集から(経済セミナー)| 2025.01.28
経済セミナー』の特集に収録されている対談・鼎談の一部をご紹介します.

(奇数月下旬更新予定)

1 はじめに

植田 東京大学の植田です。ディスカッションの司会を務めさせていただきます。ここまで、3 名のパネリストの皆さんからそれぞれ講演をいただきました。

まず、山口慎太郎さんからは、組織の多様性は企業の成長や利益向上にとって不可欠であり、そのためにも女性活躍が重要であるという点について解説をいただきました。そして、その実現のためには、評価基準の客観化、仕事のできる女性に男性側が慣れること、従来からの人的ネットワークに依存しすぎないことが重要だという指摘をいただきました。

次に、近藤絢子さんからは、まず欧米の先進国で近年指摘されている、「高所得女性ほど子どもを持つ傾向にある」という現象が、日本でも観察されることをご指摘いただきました。そのうえで、出産後も就業を継続する人が直近の 15 年で急激に増えているにもかかわらず、出産後に収入が低下してその後も元の水準に戻らない「チャイルド・ペナルティ」の影響が大きいことをデータでお示しいただきました。そして、その問題を克服するには認可保育所の整備などを通じて、出産・育児と仕事の両立を支援することが重要だという議論をいただきました。

最後に、黒田祥子さんからは、企業と協力して収集された独自のデータに基づいて、女性はその生物学的な特性から月内の体調の変動が大きく、そしてそれが心身の健康指標に影響を及ぼしていること、それは日々の生産性にも影響を及ぼしうるという分析結果をご紹介いただきました。また、それらは女性の間でも個人差が大きいこと、男性の場合も体調の悪化が生産性の低下につながることを示しつつ、男女間や個人間に差があることを認め合い、多様な人々が力を発揮できる多様な働き方を整備することが重要だというご指摘をいただきました。

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