(第8回)都市の破壊と再生:仙台、名古屋、広島

歩いて学ぶ都市経済学(中島賢太郎・手島健介・山﨑潤一)| 2023.05.22
都心に高層オフィスビルが林立しているのはなぜ? 原宿にアパレルショップが集中しているのはなぜ? この連載では、日本各地の都市で見られる何気ない風景の「なぜ」を取り上げ、その背後にあると考えられる経済学的メカニズムを解説するとともに、そのメカニズムをデータを使って検証した最先端の実証研究を紹介していきます。

(毎月下旬更新予定)

はじめに

名古屋第一の繁華街である栄には、百貨店やファッションビル、オフィスビルなどが立ち並ぶ大きな通りが 2 つある。久屋大通と若宮大通である。この 2 つの通りには、公園になっている中央分離帯を挟んで、100m 以上の幅があり、そのため 100m 道路という呼び名で市民に愛されている (図 1)。日本の道路でこの幅を確保しているのは、他には広島の平和大通りか、といったところで、車社会である名古屋の象徴と言っても過言ではない。同じく仙台においても駅前から多くの人や車が往来する広い道があり、道の先にある山の名前から青葉通と名付けられている。しかしこれらの大きな道路は戦前にはなく、その建設には土地の立ち退きなど、多大な政治的コストが払われた。

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中島賢太郎 (なかじま・けんたろう)
一橋大学イノベーション研究センター准教授。東京大学大学院経済学研究科博士後期課程修了、博士 (経済学)。東北大学大学院経済学研究科准教授などを経て、2017年より現職。都市経済学・空間経済学を専門とする。スマートフォンGPSデータや歴史的データなど、幅広いデータを用いた実証研究を行っている。
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手島健介 (てしま・けんすけ)
一橋大学経済研究所教授。コロンビア大学経済学部博士課程修了 (Ph.D.)。メキシコ自治工科大学経済研究所助教授などを経て、2022年より現職。主にメキシコと日本のミクロデータをもとに、グローバリゼーションおよび都市にまつわる諸問題を研究している。
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山﨑潤一 (やまさき・じゅんいち)
神戸大学大学院経済学研究科講師。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス (LSE) 博士課程修了 (Ph.D.)。神戸大学大学院経済学研究科助教などを経て、2021 年より現職。開発経済学、応用ミクロ計量経済学を専門とする。明治期の鉄道や江戸期の農業投資など、日本の歴史的データを用いた実証研究を多く行っている。
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※本連載は、共同執筆です。著者順は慣例に従いアルファベット順としています。