(第5回)揺れるドイツ・ショルツ政権のエネルギー政策(土田陽介)

ヨーロッパの直面するエネルギー危機| 2023.04.13
2022 年 2 月、ロシアがウクライナに侵攻したことにより、世界的にエネルギー価格が上昇する事態となりましたが、その中でも最も深刻な影響を受けているのがヨーロッパです。エネルギー危機に直面し大混乱に陥っているヨーロッパは、今後も脱炭素化・EV化を進めていくことができるのでしょうか。また深刻なインフレや財政・金融の問題にも注目が集まります。4名の EU 研究者が読み解いていきます。

(全 10 回の予定)

ロシアを前提とした脱原発と脱炭素

ドイツのオーラフ・ショルツ首相を首班とする連立政権は、2021 年 12 月に発足した。この連立政権は、ショルツ首相を要する中道左派の社会民主党 (SPD) を首班とし、環境政党の同盟 90/緑の党 (B90/Gr) と自由主義政党の自由民主党 (FDP) という、主義・主張が著しく異なる 2 つの政党がパートナーに加わるかたちで構成されている。

ショルツ連立政権は、それぞれの政党のシンボルカラーを並べると交通信号機の配色 (B90/Gr が緑、FDP が黄、SPD が赤) になることから、俗に信号連立と呼ばれる。この信号連立の下で、ドイツのエネルギー政策は大きく揺れることになった。具体的には、依存度が高かったロシア産天然ガスの利用を削減する必要に迫られたのである。

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土田陽介 (つちだ・ようすけ)
三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング (株)調査部副主任研究員。
2005 年一橋大経卒、06 年同修士課程修了。株式会社浜銀総合研究所を経て、2012 年より三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社調査部にて、エコノミストとして活動。欧州を中心にロシア、トルコ、新興国のマクロ経済、経済政策、政治情勢などについて調査・研究を行う。
主要経済誌への寄稿 (含むオンライン)、学会誌への査読付き論文多数。近著に『ドル化とは何か --- 日本で米ドルが使われる日』(ちくま新書)、『図説ヨーロッパの証券市場 (2020 年版)』(分担執筆、日本証券経済研究所)、『脱炭素・脱ロシア時代のEV戦略』(分担執筆、文眞堂) がある。