(第16回)時計の思い出

人文的な数学の話(井ノ口順一)| 2022.05.24
文学を読んでいても,人文・社会系の本を読んでいても,ついつい数学の目で見てしまい,いつの間にか話が数学になってしまいます.意外や意外,数学の話題が溢れているのです.数学者になってしまったばかりに気になってしまうことを日常生活のひとこまや読書を通じてご紹介していきます.ときどきはディープな話題に迷い込むかもしれません.
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『時間の日本史.日本人はいかに「時」を創ってきたのか』(小学館,2021) という本に目が留まりました.この本では明治の改暦の際に定時法が導入された歴史,和時計,現代の原子時計,光格子時計の話題や時間学について紹介されているだけでなく,日本における時計の歴史を解説している点が魅力です.セイコーシチズンカシオの 3 社を軸に日本時計史が語られています.古賀逸策氏が 1932 年に発表した水晶辺のカット法 (R1) の発明によりクオーツ時計実用化の道筋が切り開かれたことを本書で知りました (量産型クオーツ腕時計をセイコーが発売したのは 1969 年).

いつもの習慣で脇道に逸れます.シチズン生活協同組合ではシチズン羊羹を販売しています.製造は栃木県大田原市の (株) 本宮です.本宮ではニコン羊羹や JFE ようかんを製造しています.JFE 溶接鋼管 株式会社は J 溶管と省略して呼ばれることがあったため,発足記念に取引先へのお土産用に JFE ようかんを本宮に発注したそうです.

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井ノ口順一(いのぐち・じゅんいち)
1967 年千葉県銚子市生まれ.東京都立大学大学院理学研究科博士課程数学専攻単位取得退学.現在,筑波大学数学域教授.
教育学修士(数学教育), 博士(理学).専門は可積分幾何・差分幾何.
著書に『リッカチのひ・み・つ---解ける微分方程式の理由を探る』(日本評論社, 2010),『どこにでも居る幾何---アサガオから宇宙まで』(日本評論社, 2010),『曲線とソリトン』(朝倉書店, 2010),『常微分方程式NBS』(日本評論社,2015),『初学者のための偏微分∂を学ぶ』(現代数学社,2019)等.
日本カウンセリング・アカデミー修了, 星空案内人(準案内人), 日本野鳥の会会員.