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「調子の良い」時期のはじまりかた

海外論文サーベイ(経済セミナー)｜ 2022.01.27
 雑誌『経済セミナー』の "海外論文Survey" からの転載です．

(奇数月下旬更新予定)

Liu, L., Dehmamy, N., Chown, J., Giles, C. L. and Wang, D.(2021) “ʠUnderstanding the Onset of Hot Streaks across Artistic, Cultural, and Scientific Careers,” Nature Communications, 12 (5392).

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松井 暉

はじめに

なぜか調子が良く、そして実際に何もかもうまくいく。こんな、「調子が良い」時期は誰にでもたまにはやってくる。ただの勘違いかもしれないし、ほとんどがそうだと後になってわかる。だが、芸術家や、映画監督、科学者のようなクリエイティブな仕事を生業にする個人のキャリアにおいて、突出した成果を連続して出す時期が存在する。これは「ホットストリーク (hot streak)」と呼ばれており、たとえばキャリアの中で 1 番目と 2 番目に優れた成果はある程度連続して起こることが知られている1)。

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脚注   [ + ]

1. ↑ 論文上のホットストリークの定義は、「パフォーマンスの移動平均が標準偏差よりも大きい、連続した 5 つ以上の作品群」とされている。詳細は、Liu, L. et al. (2018) “ʠHot Streaks in Artistic, Cultural, and Scientific Careers,” Nature, 559 (7714): 396-399, の Supplementary Information の S3.4 を参照。また、Wang, D. and Barabási, A.-L.(2021) The Science of Science, Cambridge University Press, の第 7 章で、Liu et al.(2018) に基づいたホットストリークの解説がされているので、興味をもった読者は参照されたい。