対談:働き方と組織の課題に科学で挑む(経済セミナー2022年4+5月号)

特集から(経済セミナー)| 2022.03.24
経済セミナー』の特集に収録されている対談・鼎談の一部をご紹介します.

(奇数月下旬更新予定)

新型コロナショックの影響が続く中、企業や労働を取り巻く環境は大きく変化している。そして、かねてより機能不全が指摘されてきた「日本的経営」は、いよいよ変革を迫られている。こうした難しい状況下で、現場は何を指針にマネジメントを考えていくべきか? 科学の知見はそこに何を提供できるのか? 今回は、企業との共同研究経験も豊富な経済学者と経営学者のお二人に、それぞれの立場から議論いただいた。

1 はじめに

—本日は、組織や人事の研究に取り組む経済学者・大湾先生と経営学者・服部先生に、日本企業が直面する課題を双方の視点で掘り下げてご議論いただきます。まずはお二人のバックグラウンドと研究テーマからお聞かせください。

大湾 早稲田大学の大湾です。私は学部卒業後に野村総合研究所に就職し、7 年ほど経済調査の仕事をしていました。仕事でアメリカに駐在していた頃に青木昌彦先生の『日本経済の制度分析』や、当時刊行されたばかりだったミルグロムとロバーツの『組織の経済学』を読んで組織の経済学という分野に惹かれ、それを研究したいと思って退職して、最初はコロンビア大学の大学院に進学し、続いてスタンフォード大学のビジネススクールの博士課程に進みました。博士課程 1 年目の終わりに論文を書かなければならないということで、ずっと疑問に思っていた「日本の昇進はなぜ遅いのか?」という問題意識に基づいて書きました。その論文を当時在籍されていたラジアー (Edward P. Lazear) 先生にお見せしたところ非常によいアドバイスをくださり、「私が君のアドバイザーになろう」とその場で声を掛けてくださいました。ラジアー先生は「人事経済学」という分野の基礎を築かれた開祖と言っても過言ではない存在で、それ以来ずっとご指導いただきました。

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