(第2回)正倉院展

人文的な数学の話(井ノ口順一)| 2020.11.16
文学を読んでいても,人文・社会系の本を読んでいても,ついつい数学の目で見てしまい,いつの間にか話が数学になってしまいます.意外や意外,数学の話題が溢れているのです.数学者になってしまったばかりに気になってしまうことを日常生活のひとこまや読書を通じてご紹介していきます.ときどきはディープな話題に迷い込むかもしれません.

2019 年の 11 月,東京国立博物館で開催された御即位記念特別展「正倉院の世界 — 皇室がまもり伝えた美」に家族で出かけました.正倉院宝物の黄熟香 (蘭奢待) とよばれる香木 (沈香) を鑑賞しました.沈香はジンチョウゲ科の生木が樹脂化したものです.黄熟香には織田信長が切り取った跡が明示されていましたので,家族と,「そういえば次の大河ドラマは明智光秀が主人公だね」とか,「香木はね,香道で使うんだよ」などと暢気な会話をしたことを思い出します.

しばらく経って今年の 5 月ごろ,本間洋子先生の著書『香道の文化史』(吉川弘文館, 2020) を手にとりました.以前から本間先生の書かれた論文を拝読したことがあり,お名前を記憶していたのです.

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井ノ口順一(いのぐち・じゅんいち)
1967 年千葉県銚子市生まれ.東京都立大学大学院理学研究科博士課程数学専攻単位取得退学.現在,筑波大学数学域教授.
教育学修士(数学教育), 博士(理学).専門は可積分幾何・差分幾何.
著書に『リッカチのひ・み・つ---解ける微分方程式の理由を探る』(日本評論社, 2010),『どこにでも居る幾何---アサガオから宇宙まで』(日本評論社, 2010),『曲線とソリトン』(朝倉書店, 2010),『常微分方程式NBS』(日本評論社,2015),『初学者のための偏微分∂を学ぶ』(現代数学社,2019)等.
日本カウンセリング・アカデミー修了, 星空案内人(準案内人), 日本野鳥の会会員.