書評:浅古泰史『ゲーム理論で考える政治学――フォーマルモデル入門』有斐閣,2018年(評者:伊藤秀史)

2019.03.27

本書政治のゲーム理論分析への入門書である.「ゲーム理論という視点」というタイトルの序章に続く本体は3つのパートに分かれ,各パートは4つの章から構成される.各章の内容はパートI (選挙と政治) では低投票率,選挙競争,汚職,連立政権,パートII (情報と政治) では政治家の資質,選挙運動,メディア,脱官僚,パートIII (世界と政治) では政治体制,民主化,戦争,平和,である.各章は身近な具体例の紹介からはじまり,具体例からうかびあがる「なぜ」の疑問を投げかけ,フォーマルモデル (政治学における数理モデル) を設定・分析して疑問に答える,というスタイルである.モデルは数値例が中心だが,重要な変数を記号にして場合分けすることも多い.四則演算と不等式条件の導出を理解できれば論理を追っていくことができるだろう.四六判のコンパクトな体裁だが,読者には「ひたすら読む」だけではなく,自分の手を動かしてモデルの理論展開を確認することを薦めたい.練習問題も各章にあり,授業やゼミの教材としても使えるだろう.本書で紹介される各フォーマルモデルは学術論文・著書に基づくものであり,各章最後に対応する文献および参考文献が紹介されている.

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