序文(特別企画:「故意の自傷」に出会ったら — リストカットとオーバードーズ)(編:松本俊彦)
特別企画から(こころの科学)| 2026.10.19
心理臨床、精神医療、教育、福祉等の領域で対人援助にかかわる人、「こころ」に関心のある一般の人を読者対象とする学術教養誌「こころの科学」。毎号の特別企画では、科学的知見の単なる解説ではなく、臨床実践に基づいた具体的な記述を旨としています。そうした特別企画の一部をご紹介します。(毎月中旬更新予定)
◆本記事は「こころの科学」250 号(2026 年 11 月号)の、松本俊彦編「特別企画:「故意の自傷」に出会ったら — リストカットとオーバードーズ」に掲載されている序文です。◆
リストカットや医薬品のオーバードーズを意味する、「故意の自傷」という用語は、英語の“deliberate self-harm”の訳語である。ここで注意すべきなのは、「故意の」にあたる英語が“deliberate”であって、“intentional”ではないという点だ。いずれの単語も「みずから行う」という意味をもつ点は共通するが、“intentional”には「勢いでわざとやった」といったニュアンスがあるのに対し、“deliberate”には「熟慮の末、やむにやまれずにやった」というニュアンスがある。要するに、「故意の自傷」を単純に衝動的行動と一括するのはあまりに雑であって、むしろその人が「他に選択肢がない」苦境に追い込まれている可能性にこそ思いを馳せる必要がある。












