何が法を滅ぼそうとしているのか(木庭顕)
法律時評(法律時報)| 2026.09.28
世間を賑わす出来事、社会問題を毎月1本切り出して、法の視点から論じる時事評論。 それがこの「法律時評」です。ぜひ法の世界のダイナミズムを感じてください。
月刊「法律時報」より、毎月掲載。
(毎月下旬更新予定)
◆この記事は「法律時報」98巻10号(2026年10月号)に掲載されているものです。◆
1 問題とする状況

異口同音に嘆かれるのは、世界を覆う一種の終末期的状況である。整理すると、アメリカにおける政治システムの崩壊ないし徒党による国家の乗っ取り・腐敗(が通ってしまうこと)[共和/民主、保守/「リベラル」、右/左などを越えてそもそも憲法レヴェルのシステムが成り立たない国家崩壊]がコアにあり、西ヨーロッパなどではファシズム・ナツィズムを継承する勢力が力を増してこれに続こうとし、日本では(1970年代に始まる変成の終着点たる)2013年体制に至って戦後の擬似政治システムが終局的に消滅し[ここでも「リベラルの敗北」や「左派の敗北」は(相当以前にそれらは消滅していたのであるから)幻影であり、独特の総結託犠牲強要型権威主義体制成熟が真相である]、その外には多数の(しばしば巨大で粗暴な)権威主義体制が繁茂し、さらにその外側では部族構造起源の軍事衝突を典型とする大量殺戮が展開する。巨大経済組織の際限ない利益追求および残虐化する戦争および自然破壊・地球環境破滅は密接に連関し以上全ての類型を貫通する。
この状況においては(どのような法概念を採ろうとも)法が全く働いていないと判断せざるをえない。確かに、世界を見渡せば[例えば人権の実質的保障状態を見よ]法の存立は元々覚束ないものであった。しかし人々は必死に法を樹立しようとしてきた。ところがここへ来てその人々も、そもそも前提そのものが失われつつある、今後未来永劫法の基盤は育たないのではないか、と思い始めたのである。深い不可逆的な破局を誰しもが予感している。












