国境を跨がば、百聞は一見に如かず

海外論文サーベイ(経済セミナー)| 2026.09.30
 雑誌『経済セミナー』の "海外論文Survey" からの転載です.

(奇数月下旬更新予定)

Startz, M.(2025) “The Value of Face-to-Face: Search and Contracting Problems in Nigerian Trade,” Working Paper (Conditionally accepted at Econometrica)..
$\def\t#1{\text{#1}}\def\dfrac#1#2{\displaystyle\frac{#1}{#2}}$

浅井千佳

はじめに

2 つの経済主体の間でそれぞれが持っている情報に差がある場合には、「情報摩擦」が存在している。雇用主と労働者、銀行と資金の借り手などの関係において、経済学ではシグナリングやインセンティブ設計によって、情報摩擦が引き起こす問題の解決策が提示されてきた。では、経済主体が国境を越えて物理的に離れている国際貿易ではどのような情報摩擦が存在し、その問題をどのように解決できるのだろうか。

買い手と売り手が異なる国にいる国際貿易では、買い手にとって「商品の探索」と「契約の履行」の 2 点において情報摩擦が生じる。ナイジェリア・ラゴスにいる靴の卸売業者を例にとってみよう。国内から商品を調達する場合は、現地へ赴いて品物を手にとって確認し、その場で取引を行うことが容易である。しかし、靴の世界的な一大製造地である中国・広州から調達する場合、現在どのようなデザインの靴が存在し調達可能なのかをナイジェリア国内から把握するのは容易ではない。また、前払金を支払った後で本当に商品が届くのかという不安も生じる。

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