『なるほど現代宇宙論』(著:二間瀬 敏史)

一冊散策| 2026.06.29
新刊を中心に,小社刊行の本を毎月いくつか紹介します.

はじめに

すばる望遠鏡のような大望遠鏡で宇宙を覗くとモニターには大小さまざまな銀河が無数にうつる.そのどれもが私たちの天の川銀河のような莫大な恒星の大集団で,それらの銀河の中には太陽系と同じような惑星を持ち,その惑星からも宇宙を覗いているのではないかという思いにとらわれる.その惑星に生まれた宇宙人も人類と同様に「宇宙はどのようにして生まれ,どこまで広がっているのか? 」,「銀河はいつ頃どのようにして生まれたのか? 」,「星や惑星そして自分たちをつくっている物質はいつどのようにして生まれたのか? 」,などさまざまな問いかけをしているのだろう.宇宙論とは観測や物理学によってその疑問に答える学問である.

現代宇宙論は 1940 年代,宇宙は超高温,超高密度状態から爆発的に始まったというビッグバン理論の提唱に始まり, 1960 年代に確立し,そして 1980 年代にはビッグバンそのものの起源に迫るまでに発展してきた.もちろん発展はこれに留まらず,特に 20 世紀末からは暗黒エネルギーというまったく未知の登場人物が宇宙論に現れた.このような宇宙論の基礎と現状を解説したのがこの本である.


筆者は 1990 年代に宇宙論に興味を持つ学生,一般向けに入門書を書いた.当時,宇宙論の本の多くは専門的でかなりの天文学や物理学の知識を前提とするものであった.一方で,宇宙論に興味のある大学初年度の学生や一般の方も多く,専門書と通俗書をつなぐ本の必要性を感じて,あまり数学を使わず宇宙論の基本とその時点での観測を説明するのが目的であった.新たな観測が続々と登場し,新たな発展があった現在においても,そのような本が必要であると思われる.実際,上述の本を著した当時はまだ宇宙の加速膨張は発見されておらず,暗黒エネルギーも一般的ではなかった.また何十億光年という大規模なスケールで銀河がどのように分布しているかという銀河赤方偏移サーベイも始まったばかりで,それを利用した新たな観測も実現していなかった.これらの発展は現代宇宙論の常識となり,これらを理解することなしには現代宇宙論を語ることはできない.それらの新たな発展を含めた現代宇宙論の入門書が本書である.


筆者は大学で宇宙論の講義を担当していたが,本書はその講義ノートをもとにしているわけではない.本書のもとになったのは,東北大や台湾の中興大学,成功大学,インドネシアのバンドン工科大学で専門外の学生に向けた集中講義を行ったときの講義ノートである.宇宙論はおろか天文学の知識もほとんどない学生対象だったので,講義では数式を最小限にして物理的な説明を心掛けるように努めた.とはいえ宇宙論の深い理解のためにはある程度の数学的記述,物理学の知識は必要であることはいうまでもない.そこで本書では本文はできるだけ数式をさけ物理的な記述をメインとし,数学,物理学の詳細は章の最後にいくつかの「ノート (note) 」にまとめた.本文を読めば宇宙論の基礎とおおよその観測の現状を知ることができるが,より深く理解したい読者は「ノート (note) 」に挑戦してみるとよいだろう.


最後に,この本を書く動機の一つとなったとなった集中講義に参加してくれた学生諸君と,本書の出版を可能にしてくれた日本評論社の佐藤大器氏に感謝する.

2026 年 1 月 二間瀬敏史

 

目次

  • 第 1 章 宇宙論を学ぶための天文学
  • 第 2 章 宇宙の観測
  • 第 3 章 宇宙の幾何学と力学
  • 第 4 章 宇宙マイクロ波背景放射の温度ゆらぎ
  • 第 5 章 さまざまな階層の構造はどのように形成されたか?
  • 第 6 章 初期宇宙の歴史と元素の起源
  • 第 7 章 インフレーション理論

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