序文(特別企画:「こころの病気」と呼ぶ前に――診断とは何だろうか)(編:兼本浩祐)
特別企画から(こころの科学)| 2024.02.16

(毎月中旬更新予定)
◆本記事は「こころの科学」234号(2024年3月号)の、兼本浩祐編「特別企画:『こころの病気』と呼ぶ前に――診断とは何だろうか」に掲載されている序文です。◆
診療の場を訪れた人を診断することにはさまざまな効果がある。診断は経過の見通しと治療の方向性を与え、多領域の連携を容易にし、当事者に自己理解や治療意欲をもたらしうる。薬物療法や福祉サービスの利用など、診断に基づいて可能になることも多いし、診断抜きの対症療法には厳密には誤診を断罪される余地がなく、臨床の緊張感を大いに緩ます場合もある。一方で、当事者は自分が患者と見なされることに衝撃を受けたり、仕事や社会生活に支障を来したり、他者や自分自身からのスティグマに晒されたりと、ネガティブな影響を受けることもある。